室生犀星の短冊
秋も深まって、今年は室生犀星の短冊を掛けることにしました。
きりきりす 己か脛食ふ 夜寒かな 犀
《きりぎりす おのがはぎくう よさむかな》
と書かれています。
犀星は、字はあまり上手ではなかったようです。
「どうも君の字はまづかったからね」 と北原白秋からも言われたそうで、
自分でも「拙劣」と認めていたそうです。
この短冊の字も、確かにあまり上手でないような・・・ (ーー;)
もちろん、味わいのある字ではあるのですが。
ところでこの短冊は、女将の義理の祖母から受け継いだものなのです。
もう大分前に逝ってしまったのですが、その祖母は、
金沢の廓の芸者さんでお茶屋を開いておりました。
犀星さんが来られたこともあったようで、それで短冊が残っていたのでした。
祖母が生きていた頃に、犀星さんはどんな方だったかと聞いてみたことがありました。
そしたら
「室生さんは器量が悪(わる)て・・・」
《「室生さんはブサイクだから・・・」》
と、イヤなかなか厳しいお言葉でした。f(^_^;)
短冊の句ですが、西行の和歌に
きりぎりす 夜寒に秋の なるまゝに 弱るか声の 遠ざかりゆく
とあって、これを踏まえているのかもしれません。 いずれにしても、脛食うきりぎりす、夜寒とまさに晩秋です。 祖母のお茶屋さんにも、きっとそんな頃に来られたんでしょうね。
2007年10月某日