バックナンバー

今月は

いやーまさに春です。 やはり何事も気分がいいです。 そして咲いた桜を見るとまた一段と気持ちが上がりますね。 これは日本人だからなのでしょうか。 千年前に紫式部が詠んだ歌に
  世の中を なに嘆かまし 山桜 花見るほどの 心なりせば
  《世の中を 何で嘆くことがあるだろうか 山桜 花を見るような 心であったならば》
とあります。この思いは、千年経った今の我々も全く同じような気がします。 気持ちが舞い上がるような、 そんな感覚は日本は今の時節が一番でしょうね。 いっぱい春の気を吸い込んで楽しみたいですね。
金花糖も今月は、庭の光がもうすっかり春の明るさです。 花も春の花、春いっぱいでお迎えいたします。 そして今月のおすすめは「抹茶ぜんざい」です。 「抹茶ぜんざい」は、丹波大納言の餡の美味しさをアイスと合わせてシンプルに味わっていただくメニューです。 餡の上にアイスが載って、上に抹茶の濃茶がかかっています。 そして彩りに、金箔と白玉が添えられます。 濃茶はシロップではなく、お点前で使う抹茶を使っていますので、 餡とアイスの美味しさがいっそう深い味わいになります。 ほんとうに美味しいメニューです。 今月はぜひ金花糖で、「抹茶ぜんざい」をご賞味くださいね。
では、春を詠んだ俊成女(しゅんぜいのむすめ)の歌です。

おしなべて風こそかをれ春の山咲く桜あればさかぬ梢も
《押しなべて 風こそ薫(かお)れ 春の山 咲く桜あれば 咲かぬ梢も》

どこにも全て 風が薫っているのだなー 春の山 咲く桜あれば 咲かない梢もまだあるのに。
また、次のようにも読めると思います。
どこにも全て 風が薫っているけれど 春の山 咲く桜あれば 咲かない梢もまだあるのですよ。
でもどちらの意であっても、 桜の咲いて来た山の全体が 春の薫る風で包まれると、 清々(すがすが)しい素敵な歌ですね。
ただこの歌の「薫る」ですが、今は勿論よい匂いがするという意味で使われます。 例えば薫風(くんぷう)というのは、初夏の伸び盛りの草木、若い緑の匂うような風という意です。 しかし「薫る」の昔の元の意味は、気が漂(ただよ)うのが見える、感じるという意でした。 この歌の「風こそ薫れ」も単に春の花の匂いがするというよりも、 なにか春の気を感じる風という意ではないでしょうか。
でもそれはどんな風でしょうか。 ふと浮かんだのは童謡の「春よ来い」です。
  春よ来い 早く来い
  歩き始めたみぃちゃんが
  赤い鼻緒のじょじょ履いて〖じょじょ:草履(ぞうり)〗
  おんもへ出たいと待っている〖おんも:表、家の外〗
歩き始めたみぃちゃんは、外へ出たいと春を待っています。 俊成女さんが「風こそ薫れ」と詠んだ風は、外へ出てその風に当たりたい、 そんな気分になるような風ということではないでしょうか。 春は、外へ出たくなるのです。
「押しなべて 風こそ薫(かお)れ 春の山 咲く桜あれば 咲かぬ梢も」、 花が咲いて、もうすぐ満開。身も心も軽くなって心地いい春の風を味わおう。 春らしい、これはほんとにいい歌ですね。
さあ、春は満開。心も体も全開で行きましょう。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087