今月は
だんだん暖かくなってきて、いい時節になりました。服もすっかり身軽になって、外出も気分的に楽ですね。 そしてここ金沢では、暖房の石油がほんとに減らなくなりました。 今や、あんなに降った雪のことも記憶の彼方です(笑) 不思議なものです。 日本の四季というと、どうしても景色とかの話が多いんですが、 気持ちとか気分の変化も、日本人の何か気質を作っているような気がします。 とにかくここは、いい時節をいい気分で、いっぱい楽しみたいですね。 そして外出の折には、ぜひ春終盤のゆったり金花糖にお立ち寄りくださいね。
では、春を詠んだ式子内親王(しょくしないしんのう)の歌です。
ふる郷へ今はとむかふかりがねもわかるる雲のあけぼのの色
〔故郷へ 今はと向かふ 雁(かりがね)も 別かるる雲の あけぼのの色〕
故郷へ 今はこの地を離れようと向かって行く 雁も 別かれる雲と同じ あけぼのの頃の色になっているのだなー。
なんとも趣きがありますね。
でも「別かるる雲の あけぼのの色」、この「雲のあけぼのの色」というのはどんな色なんでしょうか。
まずあけぼのは、日の出の直前で、僅かに明るくなって物の色が出てきた頃を言います。
その時の山に掛かる雲は、茜色(あかねいろ)つまり暗い赤色になります。また昇ってくる日の光が逆光で当たってますから、
雲もある程度光を透しますし、暗い赤の雲が輝くようになってほんとに美しいです。
まるで別世界のような、何か大自然の大きさを感じるような気がします。
ここで式子さんがわざわざ「雲のあけぼのの色」という言い方をしたのは、
「色」を色合いのことだけでなく、その茜色の雲の、輝きなども含めた意味にしたかったからではないでしょうか。
そして、このあけぼのが特に美しいのが春です。
式子さんより200年前、今からの千年前に書かれた清少納言の枕草子、そのお馴染みのくだりです。
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。(枕草子)
《春はあけぼのですよ。だんだん白くなって行く山際が、少し明るく赤くなって、暗い紫がかった雲が細くたなびいているのです。》
やっぱり春はほんとにいいですね。
寒かった冬をようやく抜けて、花が咲く、あけぼのが、景色が美しい。
本当に嬉しい季節です。
でも雁は、春になると北へ帰ってしまうのです。春を捨てるように行ってしまいます。
理屈ではいくらでも説明できるわけですが、
やはり人間の感覚には分からない大自然を見るような気がします。
そして初めにある式子さんの歌には、「故郷へ 今はと向かふ 雁(かりがね)も」とあります。
この「今は」にもすごく力を感じます。
さあ春が来た、今はこの地を出て行こう!
式子さんはまさに何か大きな自然を歌ってますね。
「故郷へ 今はと向かふ 雁(かりがね)も 別かるる雲の あけぼのの色」、
雁が山を越えて行き、雲のあけぼのの色になった。
雁と雲が茜色のモノクロームのように見えて、
式子さんは、雁が別の世界に行ってしまったなーと感じたのではないでしょうか。
式子さんならではの感性がとらえた、春の美しい歌ですね。
さあ、晩春から初夏へ、緑の美しい時節です。
今から水分補給も忘れずに、体調を整えて楽しんでいきたいです。