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今月は

2011年 9月は

お盆が過ぎたら暑さもぱたっとおさまって、夜は虫の音が聞こえます。 今月はもっと涼しくなって、12日がもう中秋の名月、秋ですね。 気がつけば日も短くなりました。 少し前までは朝は5時前にはもう明るくなって、 夕方も7時半ころまで明るかったのですが、 今は7時になればもう暗いです。 23日が秋分の日ですから、いよいよ夜の方が長くなるわけですね。
金花糖も今月は、時節の境い目です。 暑さも過ぎたころに、氷のメニューも終わり、白玉ぜんざいを始めます。 金花糖の白玉は、舌触りが特に滑らかなのが特徴です。 丹波大納言の餡に、ほんとにつるつる白玉のぜんざいです。 秋は金花糖で、ぜひ白玉ぜんざいをご賞味くださいね。
では、夏の終わりを詠んだ相模の歌です。相模は千年前の女房です。

したもみぢひと葉づつちるこのしたにあきとおぼゆるせみのこゑかな
〔下紅葉 一葉づつ散る 木の下に 秋と覚ゆる 蝉の声かな〕

下の方の紅葉が 一枚ずつ散る 木の下に 秋と思える 蝉の声です。
目につきにくい木の下の方で、葉が紅葉して「一葉づつ」散っている。 少しずつ、でも確実に秋は来ています。 夏の終わり、秋が目前という歌ですね。
「蝉の声」ですが、源氏物語にも夏の暑い盛りのときに、 「蝉の声などもいと苦しげに聞こゆれば」 と書かれて 季節感が表わされていますから、 昔でも暑い頃が盛りという印象があったと思います。 でも勢いは弱くなりますが、晩夏になっても蝉の鳴き声は聞こえますし、 また秋口まで鳴いている蜩(ひぐらし)、カナカナがよく聞こえたりするでしょう。 そういったことが、晩夏らしい「蝉の声」として聞こえたのではないでしょうか。
あと昔は季節、春夏秋冬を、温度などで決めるのではなくて、 暦に忠実に決めていました。暦で秋になれば秋と思いました。 そういうこともあって、その頃の蝉の声に、もう夏も終わりだ、 秋が来るなーと感じたのだと思います。
「下紅葉 一葉づつ散る 木の下に」、 一枚一枚落ちるごとに、一歩一歩、夏が去ってそして秋が来る。 この時節らしい趣のある歌ですね。
次は、月を詠んだ式子内親王(しょくしないしんのう)の歌です。

ながむればわが心さへ程(はて)もなく行へもしらぬつきのかげかな
〔眺むれば わが心さへ 果てもなく 行方も知らぬ 月の影かな〕

眺めていると 自分の心さえ 果てしもなく どこへ行くのかも分からない 月の光です。
秋の澄んだ空に浮かぶ月、それはほんとに素晴らしいですね。
くもりがあると月の光も、空の途中までというか、 遠くまで行かない感じですが、 澄みきった空に浮かぶ月の光は、 ほんとにどこまでもどこまでも、遠くに行く感じがします。 じっと見ていると、自分の心まで広い空間の遠くにまで行ってしまうかのような、 不思議な感覚が湧いてきます。 秋の夜の月の美しさ、 その空に感じる空間の無限の広さ。 「眺むれば わが心さへ 果てもなく」・・・ 秋の月の、 まるでこのまま吸い込まれるかと思うような魅力が、見事に詠まれた歌ですね。
さあ、暑さも過ぎて、月もよし、秋刀魚もよし、 さつまいももよしです。(笑) 楽しみですね。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087