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今月は

2011年 2月は

雪に埋まりました!! やっぱり大寒ですね。ほんとに寒いです。 朝ストーブを点けても、ストーブはぼーぼー燃えているのですが、 とにかく暖まるまでに時間がかかります。 冬はこんなに寒かったかしらとか思うんですが、 年々、寒さがこたえるということもあるんでしょうか。(笑)
でも寒いは寒いのですが、金沢の冬は魚がほんとに美味しいです。 割烹とかはもちろんですが、 フレンチやイタリアンのお店でも、魚が美味しいので 冬の方が食べごたえがあるように思います。 こういうのは、寒いからこそ魚も美味しくなるんでしょうね。 まあ、なんでも両方うまくは行かないということでしょうか。(笑)
今月の金花糖は、もう雪の中でただただひっそりという感じなのですが、 こんなときのおすすめは、やはり温かいぜんざいです。 金花糖のぜんざいは、丹波大納言の餡に、手搗きのお餅です。 餡はもちろんお餅も、弾力があって伸びにも力があって、とても美味しいです。 今月は金花糖で、ぜひぜんざいをご賞味くださいね。
では、雪の日の、藤原俊成と藤原実定(さねさだ)の歌のやりとりです。
俊成さんが、実定さんの許に歌を届けました。

けふはもし君もや問ふとながむれどまだ跡もなき庭の雪かな
〔今日はもし 君もや訪ふと 眺むれど まだ跡もなき 庭の雪かな〕

今日は、ひょっとして君でも訪れてきてくれるんじゃないかと思って眺めているけど、 門に通じている庭の雪には、まだ何の跡も無いんですよ。
すると実定さんからは、こんなお返事がきたのでした。

いまぞきく心はあともなかりけり雪かきわけて思ひやれども
〔今ぞ聴く 心は跡も 無かりけり 雪掻き分けて 思ひやれども〕

今聴いて知りました。 心は跡を残さないんですね!! 雪を掻き分けて、心は思いを馳せているんですが。
まさか、こんなとぼけた返事が来ようとは(笑)  返事をもらった俊成さんも 笑うしかなかったでしょうね。 でも確かにその頃は、雨や雪が降ったりすると外出がすごく面倒だったのです。
外出はふつう牛車を使うんですが、 まずこの車というのが、雨が降ったりすると防水シールなんてないですから、 雨が入るのです。 だから雨よけに、車に筵(むしろ)を張ったりして出なければならなかったのです。 そんな雨が入るような状態では、冬はすごく寒いでしょう。 また、当時の貴族が着ている華やかな服には、 色によっては、水にあまり濡れると色落ちしてしまうものもあったそうです。 (洗濯できないような(-"-;) そして雪があると 牛車が走るのも大変です。 そうなると、雪の日なんて出来れば外出したくないのです。
でも逆に、そんな日に来てくれれば、ものすごく嬉しいわけですね。 俊成さんは、こんな誰も来ないような日にこそ、 君が来てくれるんじゃないかと思ってるんですが、と誘いをかけたわけですが、 「今ぞ聴く 心は跡も 無かりけり」 なんて言われたら、 結局雪にこもって、一人でごそごそと過ごしたんでしょうね。(笑)
次は、式子内親王の歌です。

色つぼむ梅の木のまの夕月夜春の光をみせそむるかな
〔色つぼむ 梅の木の間の 夕月夜(ゆふづくよ) 春の光を 見せ初むるかな〕

「夕月夜」は、夕方に出ている月、特に陰暦10日頃までの まだ若い月の意です。また、その月の出ている夜の意です。
「つぼむ」は、つぼみを持つという意と、 小さくなる、引きこもっているという意があります。
蕾が出来、 その色はまだ引きこもっている梅の木の間に見える夕月夜は、 春の光を見せ初めています。
感性がほんとに素敵ですね。 まだ春を内に秘めたままの蕾。 その梅の木の間から見える、ほの暗い細い月。
春の月といえば、「照りもせず 曇りも果てぬ」朧月夜です。 冴えた冬の月から、ぼんやりした春の月に変わる、 何かそんな気配を感じたのかもしれません。 もし空気が僅かに霞み始めていたのなら、 確かにほの暗い月の光の方が霞みは分かるのではないでしょうか。 しかし、実際はそうなのかもしれませんが、 この歌の面白さは、何かちょっと秘密めいたような、 月がそっと春を見せてくれるみたいな、そんな趣にあると思います。 梅はまだ春を表わしていないし気付かないけど、 実は月は微かに春なん ですよ・・・ 「梅の木の間の 夕月夜 春の光を 見せ初むるかな」・・・ 季節と 対話するような細やかな感性が感じられる、 そして、春を待つ気持がいっぱいの歌ですね。
さあ、まだまだ寒いですが、春も少しずつ来ています。 美味しいものでも食べて、寒さを乗り切っていきましょう。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087