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今月は

2014年 11月は

晩秋です。 今は紅葉がいちばんいい時期ですね。紅葉狩りはもう行かれましたか。 源氏物語を開いても春は桜、そして秋は紅葉がいちばんの楽しみでした。 それが千年後の今まで日本人の楽しみとして続いているわけです。 そう思えば、紅葉の眺めもますます趣を感じますね。
さて、涼しいというよりもう寒いです。 今月は7日が立冬ですからやはり少しずつ冬モードですね。 ここ金沢では今月はついにストーブの時節です。 急に寒くなったから慌てて仕舞い込んだストーブを出してくると、 そういう時にかぎって上手く点火しないとか(笑) まあ冬支度は早めがいいですね。
そして金花糖も今月は、いよいよ暖かいお餅の冬メニューです。 冬定番の、ぜんざいと、焼き餅トリオです。 金花糖のお餅はおなじみの、手でぺったんぺったんの手つきのお餅です。 お餅の伸びに力がありますよ。とっても美味しいお餅です。 冷えてくると、やっぱりお餅は体が暖まります。 今月はぜひ金花糖で、ぜんざい、焼き餅トリオのお餅メニューをご賞味くださいね。
では、紅葉を詠んだ慈円の歌です。慈円は800年前の僧です。

としをへてこけにむもるるふるてらののきに秋あるつたの色かな
〔年を経て 苔に埋もるる 古寺の 軒に秋ある 蔦の色かな〕

苔に埋もれている古寺となると、これは手入れもされてなくて もう古いままというお寺ですね。 まあ、苔に埋もれるまでは行かなくても、 さびれたままの古いお寺の所に入ると、何か静かさもちょっと違う静かさで ほんとにその場所だけが年月の経過から取り残されているような、そういう感じがします。 そんな古寺の軒に、蔦が色鮮やかに紅葉しているです。 軒にだけ秋の時節が来たのです。
蔦は常緑のもありますが、紅葉するものはほんとにきれいに色付きます。 まして苔の緑に重なると、紅葉の赤は映えます。 特に午後、日が傾いてくると日の光は赤みが強くなってきます。 すると緑は暗くなり、赤は明るくなるので紅葉は輝くように見えるのです。
時が止まったような古寺に、軒の紅葉だけが輝くように見える。 ここにも秋は来ているのだ。何か慈円さんの心は動きました。 「苔に埋もるる 古寺の 軒に秋ある 蔦の色かな」、 見渡すかぎりの紅葉ではなくて、軒にだけ見えた秋。 慈円さんはやはり僧ですから、その小さな秋に大きな自然を見ていたような気がします。 そう思うと、また趣の深い歌ですね。
次は、よみ人しらずの歌です。前書きがあります。
私を忘れてしまった男が、紅葉を折って送ってきましたので

思ひいでて問ふにはあらじ秋はつる色の限を見するなるらん
〔思ひ出(い)でて 問ふにはあらじ 秋果つる 色の限りを 見するなるらん〕

あなたは私を思い出して どうですかと聞いているのではありません。 秋のそして飽きの、行く着く 色の最後を 見せたのでしょう。
この歌を、かつて自分を捨てた男に送ったわけです。 初め、男の方はたぶん紅葉だけを送ってきたか、お手紙があってもあいまいな内容で、 とにかくもう一度どうですか、みたいなことを匂わせてきたのです。
そこで、どうお返事するかです。 何を今さら・・・ とかそのままバンッ言ってもいいわけですが(笑) よみ人しらずさんは そんな不粋な返事にはしなかったのです。
紅葉は秋の終りです。 もう秋の野原の草花は全て枯れ、紅葉が終われば鮮やかな色は何も無くなり冬が来るのです。 紅葉が秋の色の最後です。 あなたは、秋の最後の色を送ってきましたが、それは「飽き」もここまで来た、 これが最後ですと、そんな意味でしょう。 せっかく送っていただいたのですが、どうでしょうかと聞いているお便りではありませんでしたね・・・ と、 男のもう一度どうですかと聞いてきたつもりの便りに対して、 これは最後の別れの便りになってるじゃないですか、 あなたのレベルが分かるわね、とまでは言ってませんが(笑) とにかくダメ出しだしの歌を詠んでお返しをしたわけです。 「問ふにはあらじ 秋果つる 色の限りを 見するなるらん」、上手いですね。 晩秋の趣いっぱいの恋のやりとり。 まあ当人の気持ちはともかくとして、見てる側としては、面白い歌ですね(笑)
さあ、秋も終盤。寒さも来ますが、晩秋の趣を十分に味わっておきたいですね。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087