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今月は

2021年 7月は

今月は梅雨明けです。 梅雨入りは各地でずいぶん早かったので、ここ金沢でも早いのかなと思ったのですが、 結局そうでもなくまあ普通の範囲でした。 こういうことは分からないものですね。 梅雨明けは例年なら20日過ぎなんですが、今年はどうなるでしょうか。
そういえば梅雨入りは年にもよりますがなんとなく梅雨に入るという感じですが、 梅雨明けは急に蝉が鳴きだしたりとか、ぱっと夏になるような気がします。 どうも夏の太陽は、今や健康の象徴でもないようですが、 でもその明るさは今も夏の魅力と思います。 梅雨が明けて、ぱっと明るい夏になってほしいですね。
金花糖も、今月から夏メニューになります。 中頃までは大変好評のわらび餅を続けまして、 時節に応じて、くずきり、氷の夏のメニューにいたします。 くずきりは、吉野本葛を使ったもので、ほんとに美味しいです。 本葛のくずきりは、時間が経つと固くなるので作り置きができません。 ですから必ずご注文いただいてからお作りしています。 少し時間をいただきますが、くずきり本来の味わいを楽しんでいただけます。 蜜は黒蜜、抹茶蜜の2種類をお付け致しますので、 お好みで味わっていただけます。 今月は金花糖で、ぜひくずきりをご賞味くださいね。
では、七夕を詠んだ紀友則の歌です。前書きがあります。

寛平(かんぴょう)の御代(1100年前)、七月七日の夜、帝のお側に仕える男たちに、 歌を詠めと仰せられました時に、ある人に代わって詠みました歌。

天河あさせしら浪たどりつつわたりはてねばあけぞしにける
〔天の川 浅瀬白波 たどりつつ 渡り果てねば 明けぞしにける〕

天の川は 浅瀬を知らないので白波の立つ所を 探りながら歩いて来たら 渡り終わってないのに 夜明けになってしまったよ。
なんという歌ですかね(笑) 七夕の夜、帝の前でよくこういう歌を披露したものですね(笑)
むかし七夕は、すごく盛り上がる行事でした。 もともと中国から来た行事ですが、 一年に一度しか逢えない恋人同士が逢うというロマンチックな設定が人気を呼んだのではないでしょうか。 しかし中国から来た話のままでは日本の習慣に合わないので、 日本風に話を変えてやっていました。
中国の話では織女がその時だけ架かる橋を渡って男の方に行くのですが、 日本の風習では男女が逢うときは、女は待っていて必ず男の方が行くのです。 ですから日本では男が川を渡っていく話になりました。 渡る方法は適当で、舟で行ったり、浅瀬を歩いていったりと何でもありだったようです(笑) とにかく外国の文化を日本風にして取り入れる、これは昔から日本人の得意技でした。
そして七夕の夜、帝から歌を詠みなさいと仰せがあったわけです。 昔の人はほんとによく歌を詠みました。 しかし苦手な人もいます。すると代作をしてもらうことになります。 恋文に書く歌でも、代作してもらうというのがありました。 友則さんは、歌の名人として知られた人ですから、 この帝の仰せの時に代作を頼まれることになったのでしょう。
しかし代作を頼んだ人は、この出来た歌を見て、 こんな歌でいいのかなーと心配だったような気がします(笑) しかしこの歌は、あの古今和歌集にちゃんと選定されているのです。 ということは披露してみると、面白いと逆に大受けだったのでしょう!
「天の川 浅瀬白波 たどりつつ 渡り果てねば 明けぞしにける」、 昔は歌は社交のためのものでした。 貴族の社交といえば19世紀フランスの社交界のイメージが浮かびますが、 そこで大事だったものはエスプリ、その場その場に応じてさっと働くセンスや才気でした。 この歌は、紀友則さんという平安貴族の、まさにエスプリを感じる歌ですね。
さあ、夏も本番になります。 健康管理はもちろんですが、夏空の明るい気を受けて楽しみたいです。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087