今月は
2011年 5月は
震災からの立ち直りはまだまだですが、
お休みもいっぱいのいい時節が来ました。
今年はずっと寒くて大変でしたが、ここまで来れば
寒からず暑からずで、やっぱり5月はいいですね。
食べ物も、筍やたらの芽など春ならでは山菜もあれば、
カツオやアジといった夏の魚も食べられます。
ほんとに楽しみがいっぱいの月ですね。
金花糖も今月は、寒からず暑からずの時節に合わせて、
白玉ぜんざいを致します。
温かいぜんざいですが、お餅ではなく、つるつるの白玉のぜんざいです。
また今月は端午の節句ということで、兜を飾って、
庭の明るさとともに、5月の気分がいっぱいでお迎えいたします。
おでかけの際は、ぜひ、金花糖にお立ち寄りくださいね。
では、今の時節らしい、つつじを詠んだ摂政家参河(せっしょうけのみかわ)の歌です。
参河は約九百年前の女房です。
いりひさすゆふくれなゐのいろはえて山したてらすいはつつじかな
〔入日射す 夕紅の 色映えて 山下照らす 岩つつじかな〕
入日が射して 夕陽に映える紅色が 美しく表われて 山のふもとを
赤く輝かす 岩つつじです。
これは美しいですね。
夕暮れの頃だんだん暗くなっていく中で、
つつじがいっぱいの山のふもとが、赤く輝くように見えたのです。
これは、昔の人が大袈裟に情景を詠んだわけではないと思います。
日が高いときは光が白いので、つつじの赤も、木々の緑も同じように
明るくみえるのですが、
赤い光では、赤は同じように明るいですが、緑は黒になってしまいます。
日が傾き、太陽の光が赤くなればなるほど、
木々は暗く、つつじは明るく、強いコントラストになっていくわけです。
参河(みかわ)さんは、夕日がほんとに赤いその短い時間に、
つつじの紅が、周りの緑から輝くように浮かび上がる景色を
見たのではないでしょうか。
まさに、そこだけ光が当たっているかのような。
「山下照らす 岩つつじかな」、
美しい紅色が浮かんでくるような、素敵な歌ですね。
次は、伊勢の歌です。前書きがあります。
三月晦日に、うぐひすが鳴いて、雨が降って。
旧暦の昔は、3月の晦日は春の終わり、明日からは夏という日でした。
行く春を一声なきてうぐひすは夜のまなみだをたむるなりけり
〔行く春を 一声鳴きて 鶯は 夜の間涙を 溜むるなりけり〕
去り行く春・・・ 一声鳴いて 鶯は 夜の間、涙を 溜めるのですね。
春を惜しむ歌、美しいですね。
春の終わりの日、雨が降っている。きっと鶯は春を惜しんで、
夜、涙をいっぱい溜めたのだろう。・・・ 涙が雨になる、
この連想は昔から多いです。あたりまえですが、
いくら昔の人でも涙がそんなに多く出るとは思っていません。
まして鶯です。(笑) 天が、その思いに感じて雨を降らせるのです。
みんなの春を惜しむ思いに、そしてきっと鶯の涙に、天も感じたのだろう。
美しい春を惜しむ歌となれば、やはり美しく行きたいもの。
「行く春を 一声鳴きて 鶯は・・・」、さすが伊勢さん、
春の別れに相応しい歌ですね。
さあ、春も後半。元気を出して、いい時節をいっぱい楽しんで行きましょう。