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今月は

2014年 5月は

いい季節になりました。
今年は冬の寒さがずっと続いたせいか、春の暖かさがほんとに嬉しいです。 今は暖房冷房としっかりとある時代ですが、それでもこんなに思うわけですから、 昔の人はこの季節をどれだけ待ったことでしょう。 今月は連休もあってほんとに楽しみなんですが、 ゴールデンウィークと言われるのはお休みに加えて、 ちょうどこの時節にということもあるのだと思います。
今月は金花糖も五月の雰囲気で、端午の節句ということで兜を飾ってお迎えいたします。 メニューも冬メニューを抜けて、 合いメニューの白玉ぜんざい(温)となります。 金花糖の白玉は、つるつる感が特に好評です。 白玉粉の原料はもち米の粉ですが、粉がよく精製されて粒子が小さくなるほど、 つるつるの感触になります。 金花糖の白玉は、特によく精製された粉で作っていますから、ほんとに滑らかで美味しいです。 今月は金花糖で、ぜひ白玉ぜんざいをご賞味くださいね。
では、ほととぎすを詠んだ詠み人しらずの歌です。

あしひきの山郭公をりはへてたれかまさるとねをのみぞなく
〔あしひきの 山ほととぎす 折り這へて 誰か勝ると 音(ね)をのみぞなく〕

あしひきの 山ほととぎすが 絶え間なく 誰が自分に勝るのかと 声を立てて鳴いている。
「あしひきの」は山の枕詞です。 山のほととぎすの声が空に響いて、今頃の爽やかな空の感じがしますね。
「誰か勝ると」は解釈の分かれるところですが、 ここはこの時節らしさを表したと見て、 ほととぎすが自分はこんなに鳴けるんだよ、 誰にも負けないよと言わんばかりに声高く鳴いている、 そんな感じではないでしょうか。 やはり山に行くと、鳥の声などははっきり聞こえます。 特に今の時節は、 天気がいいと空もほんとにすっきりで音がよく響いて聞こえるわけですね。
そして今は空気もそうですが、小川の水も澄んでいます。 冬からだんだん日が高くなってきて、光の入り方が違ってくるのではないでしょうか。 空気も水もきれいな山の中で、ほととぎすの声が響きわたる。 見上げれば空も爽やかに広がって、 「山ほととぎす 折り這へて 誰か勝ると 音(ね)をのみぞなく」、 空気の響き、その空の広がりを、時節とともに感じる歌ですね。
次は、寂蓮法師の歌です。

くれて行く春のみなとはしらねども霞におつる宇治のしばぶね
〔暮れてゆく 春の港は 知らねども 霞に落つる 宇治の柴舟〕

終わりゆく 春の行ってしまうところは 知らないけれど 霞の中に落ちる 宇治川の柴舟が見えて。
いよいよ春を惜しむ歌ですが、霞のもやっとした趣がいいですね。 「柴舟」というのは、実はここ金沢では 昔からのお菓子の名前で日本国語大辞典に載っているほどなんですが、 まあそれはいいとして(笑) 「柴」は薪(まき)などに使ったりする細い雑木で、 「柴舟」はそれを運ぶ小舟です。
そしてその小舟が、「霞に落つる」と詠まれています。 「落つ」に急流を勢いよく下るという意があり、 下る柴舟に時節の流れを感じたのだと思います。 でも「落つる」にはもう一つ意味があるような気がします。 寂蓮さんは、春霞のかかった宇治川を上から眺めていて、 柴舟が、霞の底の方に落ちているように見えたのではないでしょうか。 それは霞んだ寂しい情景だったと思います。
春は何処へ行くのか知らないけれど、 霞むように、だんだんと消えてゆく。 「春の港は 知らねども 霞に落つる 宇治の柴舟」、 時節の流れと共に生きて行きながら、惜しむ春。 そんな思いが伝わる歌ですね。
さあ、今月が過ぎれば来月は梅雨入り。 今月は心地よい季節をいっぱい楽しんでいきたいです。
甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087