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今月は

2021年 3月は

3月になりました。ついに春ですね。 年とともに寒さがこたえるようになりまして(笑)、とにかく春の有難さを感じます。 これだけ暖房とかダウンのジャケットとかがあってこれですから、 昔の人の和歌などに春が来るのを心待ちにして、もうほんとうに喜んでいるというのももっともという気がします。 春はいつの世も、本当に有難いものだと思います。
そして今年は桜が早いとか。 ここ金沢でも月末には咲くかもしれません。 暖かくなって、そして桜を見るとほんとに気持ちが明るくなりますね。 去年から今年とまあ大変でしたが、 なんとか桜とともに乗り越えて行きたいものですね。
金花糖は今月は、おひなさまを飾り春も満開でお迎えいたします。 メニューも恒例の特別メニュー、ひなまつりパフェをいたします。 ひなまつりパフェは、 短冊に切ったスポンジケーキに金花糖の餡や苺が添えられて、ほんとに春らしいパフェです。 スポンジケーキは自家製ですから、 そのしっかりした味わいを生かしたパフェになっています。 毎年大好評のメニューです。 今月は金花糖で、是非ひなまつりパフェをご賞味くださいね。
では、春を詠んだ崇徳院の御歌です。

鶯のなくべきほどに成りゆけばさもあらぬとりも耳にこそたて
〔鶯(うぐいす)の 鳴くべき程に 成り行けば さもあらぬ鳥も 耳にこそ立て〕

ウグイスの もう鳴くはずですよという時節に だんだんとなって来たら そうでもない鳥も 耳を惹きつけるなー。
今でも3月に入って何かしてるような時、ふとホーホケキョと聞こえると、 あぁようやくほんとに春が来たんだなあと思います。 昔は当たり前ですが気象予報なんてないですし、加えて旧暦は年によって日のずれ方も違っていました。 ですから桜はいつ頃だろうかとか、季節の進み具合を見るのは、 なんと言っても鳥が鳴いたとか木の芽が伸びたとか生き物の様子を見てということになるわけです。
中でもウグイスの美しい鳴き声は、春本番の証(あかし)であり、それはもうすぐ桜の前触れです。 崇徳院さんはまだかまだかと、耳を澄ませて待っていたのです。
ところが鳴いているのかなと思っても、 何でもないいつも聞いているような鳥の声ばかりが目立って聞こえてしまう。 思うように聞こえないなとも思ったのですが、 でも一方でそういう何でもない今ならスズメのようないつも聞く鳥の声が、 耳を澄ませてあらためて聞くと、趣のある声だなーと感じたのです。
崇徳院さんは、いつも聞く音でも耳を澄ませると趣がありますよと詠んだのですが、 そう言えば音楽の世界にも、 耳を澄ませて普通の音を聴いてみようという作品があります。 現代音楽の作曲家ジョン・ケージによる「4分33秒」というもので、 これはピアニストが4分33秒ピアノの前に居て、音を出さないまま帰るという作品です。 ん?・・ですが、たしかに耳を澄ませて周りの音を聞くことになります。 よろしければですが、いちおうYouTube に演奏したものもあります。
  ジョン・ケージ作曲 「4分33秒」
現代の音楽にも、平安の和歌と同じ発想のものがあるということですね。
それにしても崇徳院さんは、大変に不遇な方でした。 平安末に75代天皇になられたのですが、勢力争いに敗れ、京を追われて讃岐で亡くなられたました。 歌を色々読んでみると、 音や香りに非常に鋭敏な感性を持っておられた方のようです。
争いに向くような人ではなかったのでしょう。 だからこそ、ごく普通にいる鳥の声に心が動いたのかもしれませんね。 「鶯(うぐいす)の 鳴くべき程に 成り行けば さもあらぬ鳥も 耳にこそ立て」、 春はウグイスそして桜が大スターですが、いつもの鳥の声にも春の響きが聞こえますよ、 崇徳院さんはそう言っているように思います。 いろんな思いが込めらえた、美しい春の歌ですね。
さあ、春三月です。空を見上げて春の光を受けて、いい気分で行きたいですね。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087