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今月は

2017年 4月は

桜の時節になると、やっぱり気分が違いますね。 もちろんお花見で、だんだん暖かくなってということもありますが、 ここ金沢では、とにかく空が明るいです。 北陸の冬空は本当にいつもどんより灰色ですから、 世の中が明るくなったという感じです。 まだまだ暖房は必要なのですが、なんといっても春の気分になりました。 そして、春らしい味覚ももう色々出てますが、 今月はコシアブラ、たらの芽などの山菜も出てきます。 味覚の方もほんとに春ですね。
金花糖も今月は、庭の光がすっかり明るくなって、花も春の花、 春の雰囲気がいっぱいです。 お花見のお帰りには、ぜひ金花糖でゆっくりされてはいかがでしょうか。 そんなときの一服のおすすめは、「抹茶ぜんざい」です。 「抹茶ぜんざい」は、丹波大納言の餡と、 自家製アイスの美味しさをシンプルに楽しんでいただくメニューです。 餡の上にアイスが載って、抹茶の濃茶がかかります。 そして彩りに、金箔と白玉が添えられています。 濃茶はシロップではなくて、お点前で使う抹茶を使っていますので、 餡とアイスの美味しさがより深い味わいになっています。 ほんとに美味しいメニューです。 ぜひ今月は金花糖で、「抹茶ぜんざい」をご賞味くださいね。
では、桜を詠んだ藤原良房の歌です。前書きがあります。

染殿の后(そめどののきさき)の前に、花器に桜の花を挿させてありましたのを見て詠みました。

年ふればよはひはおいぬしかはあれど花をし見ればもの思ひもなし
〔年経れば 齢(よはひ)は老いぬ しかはあれど 花をし見れば 物思ひも無し〕

年月を経たので 齢をとってしまいました。そうではあるけれど 花を見れば 物思いもないのです。
ぱーっと咲いた桜を見ると、ほんとに何かあった気持も晴れるような。 それが毎年変わらずそういう感覚になりますから不思議な気がします。
一方、年をとるというのも大変なもので、 いいことがないとつくづく思います(笑) すると、 年が勝つか桜が勝つかということになりますが(笑) たしかに瞬間は、 桜が勝つかもしれません。 でもたとえ瞬間であっても、それはすごいことです。 やっぱり桜です。
しかしこの歌には、もう一つ意味があります。 前書きにある染殿の后という方は、文徳天皇の御后ですが、 良房さんの娘なのです。 この歌はその娘さんを前にして詠まれたわけですから、 まさに「花」は自分の娘です。
立派になった娘を見ていれば、年をとった物思いも無くなるのです。 昔の貴族と我々では比較になりませんが、 成長した子供の姿に年も忘れて晴れやかな気持ちになるというのは、今も同じと思います。 もちろん、年をとったことを晴らしてくれるものは人によって様々、 いろんなものがあります。 でも昔から、日本人には桜、そして子供の成長した姿というのは何よりのものだったのでしょう。 「年経れば 齢(よはひ)は老いぬ しかはあれど 花をし見れば 物思ひも無し」、 ここは子供はともかく、やっぱり桜はすごいということで(笑)
次は、桜の時節の終わりを詠んだ紀貫之(きのつらゆき)の歌です。

吹く風と谷の水としなかりせばみ山がくれの花を見ましや
〔吹く風と 谷の水とし 無かりせば 深山(みやま)隠れの 花を見ましや〕

吹く風と 谷の水とが 無かったならば 深山の奥に隠れていた 花をはたして見るだろうか。
ちょっと意味が??かもしれませんが(笑) 昔の人は、 花を散らす風、その散った花を海に流してしまう谷の水、 これらこそが美しい桜の時節をあっという間に終わらせてしまう理由と思っていました。 でもこの歌で貫之さんは、 その吹く風と流れる水があればこそ、深山に隠れたままであった桜を、 ついに川の流れに浮かぶ花として見ることができるではないか、と言っているのです。
もちろんどの花びらが深山隠れのものかとか、そんな区別がつくはずはありません。 それはあくまでも想像とか観念の世界です。
これは古今和歌集にある歌です。 古今集は貫之自身が中心となり編纂した歌集です。 そこには桜の歌がなんと七十首も続いています。 最初の歌は植えて初めて咲いた桜に、散ることは習得しないでほしいと願う歌です。 二番目は誰も心を寄せることがない高い山の桜に、私は見て誉めたたえたいという歌です。 そのあと桜の咲いている歌から散っていく歌へと、 もちろん感覚的にですが、時間の順序に歌が並びます。
そしてこの歌が、その桜の最後の歌なのです。 すでに木に花は無く、山から来る川に浮かぶ花びらが海へと流れ行くのを見るだけの時です。 桜の時節との別れは、ここで深い山奥に隠れていた花を見ている、という想像で終わるのです。 「吹く風と 谷の水とし 無かりせば 深山隠れの 花を見ましや」
人けの無い山奥に散る花が浮かびます。 そしてこの想像が、桜の最初の歌や二番目の歌の思いの結びになっているのです。 流れ行く深山隠れの花、これは天才歌人紀貫之の、想像力を楽しむ歌ですね。
さあ、春です。固まった体もほぐれて、身も心も軽くなって、いっぱい楽しみたいですね。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087