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今月は

2016年 11月は

11月になりました。 早いですね、とか言ってしまうのは年のせいでしょうか(笑) そして、 秋終盤でだんだん寒くなってきました。 ここ金沢では、いよいよ仕舞ってあったストーブを出してきて冬の準備です。 でも今月は、やはり紅葉が楽しみですね。 紅葉はそれぞれ名所はもちろん見事なものですが、 古来、日本では春の桜に秋の紅葉ですから、 何処へ行ってもいろんな所で楽しめるのも嬉しいです。 意外な所で見事な紅葉が見られたりします。 今月は、最後の秋をいっぱい楽しんでおきたいですね。
金花糖も今月は、いよいよ温かいお餅メニューで、ぜんざい、焼き餅トリオをいたします。 金花糖のお餅は、職人さんが手でぺったんぺったんついたお餅です。 手つきの餅は、伸びに力があります。とっても美味しいお餅ですよ。 そしてだんだん冷え込んでくると、やっぱりお餅は体も暖まって元気も出ます。 今月はぜひ金花糖で、ぜんざい、焼き餅トリオのお餅メニューをご賞味くださいね。
では、紅葉を詠んだ藤原兼房の歌です。前書きがあります。
 屏風の絵に、牛車を動かないようにして紅葉を見ているところを詠みました。

ふるさとはまだとほけれどもみぢばのいろにこころのとまりぬるかな
〔故郷は まだ遠けれど 紅葉(もみぢば)の 色に心の 止まりぬるかな〕

故郷は まだ遠いのに 紅葉の 色に心が 止まり車も止まってしまったなー。
美しい紅葉、いつまでも見ていたいという気持は分かりますね。 でも故郷へ帰る途中、もう近くまで来ていれば余裕もあるでしょうが、 まだ遠いから早く故郷へ急ぎたいはずですが、 紅葉に車を止めてゆっくり見てしまうことになったわけです。
この歌は屏風歌です。昔は屏風の絵によく歌を付けました。 よくあるのは、屏風に一月から十二月までのそれぞれの月にちなんだ絵が描かれていて、 そしてそこに歌が書かれているという形です。 これは絵を描く人と、歌を詠む人が違います。 ですから絵描きさんと歌人のコラボ作品ということです。 そこで、歌を詠む人は絵を見て想像を膨らませて詠むわけです。面白いですね。
この歌でも絵に描かれているのは、紅葉とそれを見ている牛車の人だけでしょう。 でも兼房さんは、その牛車は故郷へ帰る途中なのだという想像を加えて詠んだのです。 すると同じ絵でも、また色んな思いが浮かぶ絵になるわけです。 なるほどの楽しいコラボですね。 「故郷は まだ遠けれど 紅葉(もみぢば)の 色に心の 止まりぬるかな」、 故郷へと急ぎたいけど、見とれてしまう紅葉の美しさ。 屏風歌ならではの素敵な歌ですね。
次は、もう終盤の秋を詠んだ藤原公能(きんよし)の歌です。

夜をかさねこゑよわりゆくむしのねに秋のくれぬるほどをしるかな
〔夜を重ね 声弱りゆく 虫の音(ね)に 秋の暮れぬる 程を知るかな〕

夜を重ね 声の弱りゆく 虫の音に 秋も終わりまで来た 時節なのだと知った。
虫の声がだんだん弱々しくなっていくのは、ほんとに寂しい感じがします。 少し前まではやかましいくらいに鳴いてたのに・・・ そういえば虫の音は、 趣のあるものですが、近くで鳴かれるとほんとにやかましいですね。 何か邪魔をしに来たのではないか(笑)と思うほどです。 それが、声がか細くなってそして途切れ途切れにしか聞こえなくなってしまいます。
秋の終りは色んな風に知ることができます。 でも虫の音は、秋が来ると聞こえ始め、秋の終りには聞こえなくなってしまう。 まさに虫の音は秋と共にあります。 そして秋が暮れると共に声が弱るのは、虫も弱り生涯を終えるからです。 公能さんが、秋の終りを虫の音に強く感じたのはそんな所からと思います。 「夜を重ね 声弱りゆく 虫の音に 秋の暮れぬる 程を知るかな」、 虫の音そのままに秋も消えてゆくような、秋が終る何か寂しい気分がすごく伝わってくる歌ですね。
さあ、秋ももう少しです。秋を味わいながら冬支度で、これも今の時節の趣ですね。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087