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今月は

2014年 9月は

先月は台風の影響もあって暑いかと思うと雨が続いたり、 大きな災害もあってほんとうに大変でした。
そして、まだ残暑もありますが、夜は涼しいし虫の音が聞こえます。 今月は秋らしくなる月ですね。 暦は先月の7日が立秋でした。 立秋は太陽の位置が、夏至と秋分のちょうど真ん中に来る日です。 だから全ての源である太陽はもう秋の位置まできているんですが、 高気圧がどうとか寒気がどうとか、 暑さ寒さはまたぶり返したり、ほんとに来てみないと分からないような。 でも、暑さ寒さも彼岸までとか。 秋のお彼岸の中日は秋分、今月の23日です。 その頃までにはということで、今月はどっと秋らしくなりそうですね。
金花糖も、今月はだんだんと秋の雰囲気です。 庭の景色も少しずつ秋らしい色になって、落ち着いた感じになってきます。 そして秋がやってくる今月には、「抹茶ぜんざい」はいかがでしょうか。
「抹茶ぜんざい」は、シンプルに丹波大納言の餡と、自家製アイスの美味しさを楽しんでいただくメニューです。 餡の上にアイスが載って、そこに抹茶の濃茶がかかっています。 彩りとしては金箔と白玉が添えられます。 濃茶はシロップではなくて、お点前で使う抹茶を使っていますから、 餡とアイスの美味しさが、 深さが加わわって引き立つような味わいになっています。 ほんとに美味しいメニューです。 ぜひ今月は金花糖で、「抹茶ぜんざい」をご賞味くださいね。
では、初秋の思いを詠んだ崇徳院の歌です。

いつしかと荻の葉むけのかたよりにそそや秋とぞ風もきこゆる
〔いつしかと 荻(おぎ)の葉向けの 片寄りに そそや秋とぞ 風も聞こゆる〕

いつのまに 荻の葉の、風になびく向きの 片寄りに、そうそう!! さやさや秋と 風も聞こえる。
別に秋とは限らず何であっても、特に意識してなかったようなことから、 あぁこの感じはそういえば・・・ と気付くことがあります。 それは目に見えるよりも早く、音とか匂いからという場合もあると思います。 そして崇徳院さんが、これは秋の気配ではと感じたのは、荻の葉の風のなびき方でした。
荻は、ススキとすごくよく似た草です。 湿潤な土に生えるものですから、 川原のススキと思ってたものが実は荻ということもあるそうです。 そしてこの荻もススキと同じで、 あのホウキのような穂になるのは、本当に秋になってからです。 だからこの歌の頃はまだよく見えるのは葉っぱの方で、 だからこそ 「荻の葉向けの」 となっているわけです。
それにしても、そんな葉のなびき方に秋の気配が表れるんですね。 崇徳院さんは、葉のなびく 「片寄り」 に秋を見たのですが、 思うに、これは季節風が夏の向きから冬に変わったというのではないはずです。 季節風が変わる時期としては早すぎるのです。 すると、これは荻が成長して丈が高くなって、風になびきやすくなった頃ということではないでしょうか。 荻は1mから2m以上にまでなるものです。 葉がそれだけ高くなれば、風になびく感じはたしかに違うと思います。 それでも、やはり繊細な感覚があればこそと思います。 この崇徳院という方は、他の詠まれた歌を見ても、 実に繊細な感覚を持たれているということが分かります。
そして聞いてみれば、風にさやさやと、その葉擦れの音にも秋が聞こえている。 丈が高くなった葉擦れの音もたしかに違うと思います。 「荻の葉向けの 片寄りに そそや秋とぞ 風も聞こゆる」、 繊細な感性がとらえた初秋の思い、日本の季節の奥深さ、 ほんとにすてきな歌ですね。
次は、月を詠んだ源俊頼の歌です。

山のはにくものころもをぬぎすててひとりも月のたちのぼるかな
〔山の端に 雲の衣を 脱ぎ捨てて 一人も月の 立ち上るかな〕

月が、山のあたりにある雲を置き去りにするようにして上ってきたんですね。 雲は山の近くにあるまま、月だけ「一人」離れて空に高く輝いたのです。
こういう月を見ると、やはり月の持っている何か神性を感じてしまうのではないでしょうか。 雲にかぎらず全て同じ自然とはいいながら、我々人間にとって、月は太陽とともに まさに世に二つとない特別な存在です。 知られている伝説や神話も数え切れないほど。 平安の頃に書かれたある辞書には、仏が吉祥菩薩に月を造らせたという、 そんな驚くような文言まであるのです。 そして俊頼さんには、月が、その世に二つとない美しさをあまねく見せるために、 雲を抜け高く立ち上ったのではないかと、そんなふうに思えたのでしょう。 「雲の衣を 脱ぎ捨てて 一人も月の 立ち上るかな」、ほんとに 「一人も」 が利いてますね。 輝くとか美しいとかそんな言葉は何もないのに、月の輝かしい姿が見事に浮かんできます。 素晴らしい歌ですね。
さあ、秋が来ます。 中秋の名月は早めで今月8日、さっそく秋の楽しみがきます。 やはり輝く満月が見れるといいですね。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087