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今月は

2021年 2月は

先月は大雪がありました。 雪が多いときは雪かきも大変で、ほんとに疲れ果てます。 それでも、今は昔ほど雪は降らず、 除雪の機械や設備も発達してずいぶん楽になったわけです。 昔は北陸の人は粘り強いと言われました。それは分かるような気がします。 そしてそう言ってうちに、3日が立春です。とにかく春を待ちたいです。
今月の金花糖は、まだストーブがボーボーと燃えて静かな雰囲気です。 こんな時のおすすめは、力の出るお餅メニューを、焼餅トリオはいかがでしょうか。 金花糖の餅は、職人さんが木の杵(きね)でペッタンペッタンついた手つきのお餅です。 焼餅トリオは、そのお餅を三つの味わいで楽しんでいただくメニューです。 海苔を巻いた磯辺まき、丹波の黒豆きなこを使ったあべかわ、 そして抹茶味の三つの味わいがセットになっています。 冬の落ち着いた雰囲気で、ぜひ焼餅トリオをご賞味くださいね。
では、春の初めの伊勢大輔(いせのたいふ)の歌です。 前書きがあります。

正月の七日が卯の日にあたりました時に、今日は卯杖(うづえ)をつきましたかなどと、 孫の通宗(みちむね)の所から言ってまいりましたので詠みました。

うづゑつきつままほしきはたまさかに君がとふひのわかななりけり
〔卯杖つき 摘まま欲しきは たまさかに 君が問ふ日の 若菜なりけり〕

卯杖(うづえ)は邪気払いの杖です。 また七日は若菜を摘み、食して年を積み、長寿を願うという日でした。
卯杖をついて 摘みたいものは、七日というより、思いがけなくに あなたが便りをくれた日の 若菜ですよ。
この年は邪鬼払いの卯の日と、若菜の七日が重なったわけですが、 するとそんな日に、孫の通宗さんがちゃんと邪鬼払いをしましたかと心遣いをしてくれた、 おばあちゃんの伊勢大輔さんは涙が出るほど嬉しかったに違いありません。 七日よりも、あなったが気づかってくれた日の若菜ですよと詠んでお返事したわけです。 でも今はおばあちゃんでも、伊勢さんはかつてはとても華やかな人だったのです。
伊勢さんは若い頃に、藤原道長の娘で一条天皇の皇后であった彰子に、 女房として仕えることになりました。 宮中に入って早々に、奈良の僧都から桜が贈られて来るという催しがありました。 その桜を、ずらりと並んだ貴族達の中で受取るのは選ばれた女房です。 決まっていたのは先輩女房の紫式部でした。 紫式部ならばどんな場面でも引けは取らないでしょう。
でも紫式部はその華やかな役を、新しく来た人にと伊勢さんに譲ったのでした。 そして伊勢さんが桜を受取ると、藤原道長からただ受取るだけではだめですよと言われます。 そう言われれば昔の人はすぐに分かります。 お返しの歌を詠まなくてはなりません。 伊勢大輔さんは、さっと歌を詠みました。

いにしへの 奈良の都の 八重桜 今日九重(ここのえ)に 匂ひぬるかな

往古(いにしえ)の八重桜が、今日は九重の宮中に匂う。
なんと美しい歌でしょうか。 万人感嘆し、宮中も鼓動したと昔の本は書いています。 宮中に衝撃のデビューでした。
伊勢大輔さんは、その後も多くの美しい歌を詠み活躍しました。 でもおばあちゃんになった今は、きっと孫の元気な姿が何より嬉しいのだと思います。
そんな日々に、 孫の通宗さんから卯杖で邪鬼払いをして若菜も食べて長生きしてくださいねと言ってきたのでしょう。 伊勢さんは、あなたの言葉が何より一番の邪鬼払いですよという気持ちだったと思います。 「卯杖つき 摘まま欲しきは たまさかに 君が問ふ日の 若菜なりけり」、 若い頃の華麗な歌ではありません。でも、ほんとに心から詠まれた素敵な歌ですね。
さあ、節分そして立春です。日も明るくなりますから、元気にいきたいです。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087