今月は
2004年 5月は
いい季節になりました。5月は草木の色が、
なぜか鮮やかに目に映ります。冬に慣れてしまった目が、ようやくここで醒める
かのようですね。金花糖でも、冬の間お休みしていた、冷鯛(ひやったい)
を始めました。そして、冬のお餅メニューも今月まで。爽やかな季節を
金花糖で、ゆっくり楽しんでくださいね。
では、爽やかな季節を感じて、千百年前、素性(そせい)法師が詠んだ歌です。
おもふどち 春の山べに うちむれて そこともいはぬ 旅寝してしが
<仲間たちと春の山辺に 連れ立って どことも言わず 旅寝をしたい>
千百年前の、しかも偉いお坊さんでも、こんな風に感じる季節なんですね。
爽やかで草木が青々としてくると、何かその緑にもっと浸りたいような
そんな思いがして、素性法師さんも「そこともいはぬ旅寝してしが」
となってしまったのでしょうね。
次の歌は、まず、下のような意の詞書が付いています。
いっしょにいた人が、「ほととぎすが鳴いてほしいなあ」と
言いました曙に、近くの片岡山の梢が美しく見えましたので
時鳥(ほととぎす) 声待つほどは 片岡の 森の雫に 立ちや濡れまし
<ほととぎすの声を待つ間は 片岡山の 森の雫に 立って濡れましょうか>
曙に、美しい森に立ち、その雫に濡れながらほととぎすの声を待つ、
なんて爽やかで瑞々しい感性でしょう。この歌を詠んだ人は、
まだ娘の頃であった、紫式部。
もちろん、後に源氏物語を書くなどとは、
思ってもいなかった頃。紫式部といえば、豊かな知性に恵まれた理知的
な人という印象です。でも娘時代の、こんな瑞々しい感性に
知性が重なって、あの「源氏物語」が書けたんですねー!!
いづれの御時にか、女御更衣あまたさぶらひたまひける中に・・・
(源氏物語)