今月は
2004年 4月は
来ました、桜の頃ですね。4月は、なんといっても桜です。
古来、日本でこれほど愛された花はないでしょうね。
千百年前の古今集でも、桜が、飛びぬけて多く歌われています。
そして単に「花」と言えば、桜のことでした。
金花糖も、今月はその雰囲気で、花見だんごをお出しします。
丹波の黒豆きなこと、金花糖の餡が添えられて、コーヒー付きです。
ぜひぜひ、お楽しみくださいね。
では、桜が咲いた、という思いを詠んだ 式子内親王(しょくしないしんのう)
の歌を。
いま桜 咲きぬと見えて うす曇り 春にかすめる 世のけしきかな
<今 桜が咲いたと見えて 薄曇りの空が 春の色に霞んでいる 世の景色だ>
薄曇りの空が、ふと薄っすらと紅がかかったように見えた。
式子内親王さんの感性には、今、はるばると見渡すかぎりに桜が咲いた、
という思いが写し出されたのです。その思いを重ねて、
遠くまで、春の色に霞む素晴らしい眺めがあるのです。
ただただ、美しい!の一言です。難しい言葉も何もなく、
美しい感覚が、ゆったりと歌われていますね。
同じく、桜が咲いたことを感じた歌ですが、全く違う感性の歌を。
なべて世は 花咲きぬらし 山の端を うすくれなゐに 出づる月影
<すべて世は 桜が咲いたのだろう 山の端を 薄く紅に 出る月の光>
暗闇に山の端が薄紅に浮かぶ。
いつもより、すこし紅色に
浮かんでいるのです。あの山も桜が咲いたのだ、
すべて世は桜が咲いたのだろう、
と思いを写しているうちに、月の光が現われる。
山の端の紅が重なり、月も赤くなっている。
すごい光景です!桜に満ちた世に、赤い月!!
詠んだのは、木下長嘯子(きのしたちょうしょうし)。
1700年頃の人ですが、その時代にまさに異色の感覚、
何か頽廃的な雰囲気になっています。
今も昔も、桜は、人の心まで薄紅色に染めるようですね。