今月は
2012年 3月は
雪も一段落して、ようやく3月になりました。
まだ庭に雪は残っていますが、日も長くなりました。
だんだん暗くなるのが遅くなってきて、さあ春が来ているという感じがします。
でも、まだ温かいものの方が美味しいので(笑) 早くもう一段暖かくなってほしいところですね。
今月の金花糖は、お雛さまを飾って、春の気分いっぱいでお迎えいたします。
庭からの光も明るくなって、春らしい雰囲気でお楽しみいただけます。
メニューも今月は特別メニューとして、ひなまつりパフェをいたします。
ひなまつりパフェは、短冊に切ったスポンジケーキに餡や苺を添えた、
色も春らしいパフェです。スポンジケーキは自家製の、毎年大変好評のメニューです。
三月は金花糖で、是非ひなまつりパフェをご賞味くださいね。
では、源氏物語にある梅の花を詠んだ歌です。
登場人物の浮舟が詠むのですが、もちろんほんとに作ったのは紫式部です。
夜明け前の読経のときに、人を呼んで梅の花を折らせると、散ってひときわ匂ってきますので
袖ふれし人こそ見えね花の香のそれかとにほふ春のあけぼの
〔袖触れし 人こそ見えね 花の香の それかと匂ふ 春の曙〕
袖を触れた 人こそ見えないけれど 花の香の あの人かと、匂う 春の曙です。
梅の花の香りが一段と匂ってきて、はっとした!! 一瞬あの人が来たのか、と思ってしまったのでした。
梅はなんといってもその香りが賞揚された花です。
そして梅の木に近づいて梅が袖に付けば、袖が振られたりして香りが漂います。
浮舟さんの一瞬の思いに浮かんだ人には、そんな思い出があったのでしょうか。
また、その頃は男性も女性も、おしゃれとして香りがとても大切なものでした。
特別に調合した香を、袖に薫き染めておくのです。
思いに浮かんだ人は、よく梅を思わせる香りを、袖に薫き染めている人だったのかもしれませんね。
そして曙は、まだほの暗い、色がようやく見分けられるかという時です。
ほの暗い微妙な光の中では、いろんな想像が浮かびやすいもの。
「袖触れし人」は見えなないけれど、ほの暗い中からふわっとあの人が現れる、
花の香りから一瞬そんな思いが浮かんだのではないでしょうか。
「花の香の それかと匂ふ 春の曙」、やはり、艶という言葉が浮かびます。
源氏物語ですね!!
次は、梅の花にちなんだ歌のやりとりです。
梅の花にそえて、藤原定頼が大弐三位(だいにのさんみ)に歌を送りました。
ちなみに歌をもらった大弐三位さんは紫式部の娘です。
見ぬ人によそへてみつる梅の花ちりなんのちのなぐさめぞなき
〔見ぬ人に よそへて見つる 梅の花 散りなん後の なぐさめぞなき〕
逢わない人に よそえて見ていました 梅の花 散りました後の 慰めがないのです。
少し付け加えると、あなたに逢えないので、あなたのように素敵な梅の花を見て慰めていました。
でも花も散ります。そのあとは、もう絶えられません!! うーん、かなり考えた文句でしょうね。(笑)
すると、大弐三位さんのお返事は
春ごとに心をしむる花のえにたがなほざりの袖かふれつる
〔春ごとに 心を染むる 花の枝に 誰がなほざりの 袖か触れつる〕
春ごとに 心に深く刻まれる 花の枝に 誰の、いいかげんな思いの 袖が触れたのでしょうか。
あなたの家の梅の花は毎年素晴らしいんですけど、
この送られてきた花の枝は、何か他の香りが混ざってますよ。
知らない香りですけど、誰の袖が触れたんでしょう。
他の女性が思い浮かぶような、鋭いつっこみですね。(笑)
大弐三位さんがほんとに匂いを見分けたのでしょうか。それとも二股の噂を聞いてて、
わざとそんな返事を送ったのでしょうか。まあ、それは分からないのですが、
実はどちらでもない可能性もあるのです。(笑)
その頃の男性は、
男の誘いに対して女が歌などで上手に拒んでくる、それも女性の大きな魅力の一つでした。
源氏物語にも、男に簡単に応じてしまった女性にがっかりするという條があります。
大弐三位のお母さんは実生活では堅い人でしたが、
娘さんの方はいろいろ軟らかい人でした。(笑) 恋のテクニックに抜かりはなかったと思います。
定頼さん、せっかく「散りなん後の なぐさめぞなき」 と送ったのに、
「誰がなほざりの 袖か触れつる」と戻ってきて、
多分ますます熱を上げることになったのではないでしょうか。(笑)
さあ、春近し。こんな恋の話が出るといいんですが。(笑)