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今月は

2011年 11月は

たまに暖かい日もありますが、やはりだんだんと冷えてきました。
秋もほんとに深くなって、 あちこち目にする木の葉も、紅葉になってきて美しいですね。 そして11月ということは今年もあと2ヶ月なんですね。 ここ金沢では今月はストーブを出して、灯油も買ってきて、 冬の準備を始めます。いよいよそんな時節がやってきました。
金花糖も今月から、冬メニューを始めます。 ぜんざい、焼き餅トリオのお餅メニューです。 お餅は、おなじみの杵でぺったんぺったんついた手つき餅ですから、 伸びに力があってとっても美味しいです。 冷えてくると、やっぱりお餅は体が暖まりますし元気が出ます。 今月は、ぜひ金花糖のお餅メニューをご賞味くださいね。
では、秋を詠んだ紀貫之の歌です。

竜田河秋にしなれば山ちかみながるる水も紅葉しにけり
〔竜田河 秋にしなれば 山近み 流るる水も 紅葉しにけり〕

竜田河 秋になれば 山が近いので 流れる水も 紅葉している。
上流の山で紅葉が散って、川いっぱいに赤い紅葉が流れているのは、 想像しただけで美しいと思いますね。 でもこの竜田河の水は、「流るる水も 紅葉」してるのです。 山が近いので、きっと河の辺りにも紅葉の木があって、 水は、流れてるいっぱいの紅葉で赤く見えるのに加えて、 木の紅葉までが映り込んでるのかもしれません。 もう川の水そのものが赤いような、 水までも紅葉したかのように見えたのです。 これはなんとも美しい光景ですね。
この竜田河の流域の竜田山には、竜田姫という女神がおられます。 じつは秋という季節をつかさどっているのは、その竜田姫なのです。 するとやはり山が近いので、竜田姫の御威光で水までも紅葉しているのだろうか、 そんな思いも浮かんだのではないでしょうか。 素敵な思いですね。 「山近み 流るる水も 紅葉しにけり」、 秋ならではの美しい光景に、季節の女神も思わせる、ほんとに素敵な歌ですね。
次は、慈弁の歌です。滋弁は平安後期の僧です。

ちりつもる木のはも風にさそはれて庭にも秋のくれにけるかな
〔散り積る 木の葉も風に 誘はれて 庭にも秋の 暮れにけるかな〕

散り積っている 木の葉も、風に 誘われて行き 庭にも秋の 暮れとなってしまった。
木の紅葉もそうですが、落葉も全て真っ赤でなくても、 黄色や緑、枯葉色が混ざったのもほんとに美しいです。 鮮やかな赤い色で散ってきても、 積っているうちには枯葉になるでしょうし、 この歌の庭の落葉はどんな感じだったのでしょうか。 でもどういう色であれ、 美しい色あいが庭に広がっていたんでしょうね。 それが、風に誘われるように飛ばされて、地面が見えるだけになってしまった。
この頃に吹く風というとやはり木がらしでしょうか。 ただ風は、秋でも吹く時には吹くわけですが、 葉が散り降ってくる間は、吹き飛ばされてもまた積ってしまいます。 でももう全て散ってしまうと、「風に誘われて」飛ばされてしまってそれっきり。 木にも地面にも無くなって・・・ 秋もほんとに「暮れ」ですね。
いつも見ていた庭から美しい色が消えると、 まるで庭は光を失ったように感じるのではないでしょうか。 その感覚もまさに、「庭にも秋の 暮れにけるかな」と思います。 暮れ行く秋の趣、気分をいっぱいに感じる歌ですね。
さあ、秋も終盤。紅葉狩りで美しい秋を満喫したら、いよいよ冬が迫ってきます。 暖かい下着も用意して、寒くても元気に行きたいものですね。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087