今月は
2001年 4月は
4月は桜です。昔は「花」といえば、何も言わなくてもそのまま桜のこと
でした。今でも「花見」は桜の花見のことですよね。そこで今月の
メニューも、桜餅です。餡を包む皮には関西風の分厚いタイプと、
関東風の薄く焼いたタイプがあるのですが、今月の桜餅は、
道明寺粉でむっちりと厚めに作られたものです。外側に巻く桜の葉ですが、
これも、食べられる方と残される方に分かれますよね。あなたはどちらで
しょうか。
4月の異名は、花名残月(はななごりづき)です。
旧暦では3月が花の月ですから、その名残の月という意味でしょうが、
満開になったかと思うと散り始める、桜の花の散りやすさ、それを惜しむ
思いが込められた名前のように感じます。
散っていく桜を詠んだ和歌は数知れませんが、古今和歌集の
撰者でもある 紀貫之(きのつらゆき)の歌
桜花 散りぬる風の なごりには 水なき空に 波ぞ立ちける
桜の花が散った風のなごりには、水のない空に波が立った!!
花が散って風が吹き抜け、その名残に水のない空に波が立つ・・・ 実際に見ていても、
風が吹き花びらが流れ、風が吹き抜けた後、
一瞬の間を置いてから花びらが何か一斉にさっと動く、
そんな感じがします。ほんとに風の名残のように --- きっと
何か空気力学的な理由があるんでしょうね --- 空に波が立つのです。
「なごり」の原義は、
波の引いた後に残るものということだとか。桜が散っている大空に見えた幻想の波、それは
風の名残の空(から)の波・・・ 美しく、空っぽで、そして大きい、素晴らしい歌ですね。