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今月は

2011年 7月は

今月は梅雨明け、そして夏ですね。
じめじめが終わるのはありがたいですが、 やはり暑さは大変、いつもにも増して体調には注意したいところです。 体調といえば、今月は21日が土用の丑の日です。 由来はともかく鰻を食べる日ですが、 これもなぜか蒲焼と決まってて、こういうのも、 夏の体調に合ったものだから続いているのかもしれませんね。
今月の金花糖は、中頃までは美味しいと好評のわらび餅を続けまして、 それから、くずきり、氷の真夏メニューとなります。 くずきりは、吉野本葛を使ったものでほんとに美味しいです。 本葛のくずきりは時間が経つと固くなってしまうので、 必ずご注文をいただいてから作っています。 少しお時間をいただきますが、くずきり本来の味わいを 楽しんでいただければと思います。 蜜は2種類、黒蜜と抹茶蜜をお付けしています。 今月は金花糖で、ぜひくずきりをご賞味くださいね。
では、夏のよみ人しらずの歌です。

あけたてば蝉のをりはへなきくらしよるはほたるのもえこそわたれ
〔明け立てば 蝉の折り這へ 鳴き暮らし 夜は蛍の 燃えこそわたれ〕

夜が明け始めれば 蝉のように、そこからずっと なき暮らし 夜は 蛍のように、燃えて燃え続けているのです。
「鳴き」は、泣きの意が掛けられています。
これはもちろん恋の歌です。 すごいことになってますね。(笑) 今も昔も、 恋の便りはこうなってしまうのかもしれません。 恋に燃えている人の思い浮かぶことは、 普通にはありえないものですね。(笑) 2階の窓から 顔を出したジュリエットを見上げて、ロミオはこう思います。

大空中で最も美しい星のうちの二つが、 何か用事があって、戻るまで 自分たちの空で輝いていてくださいと、彼女の眼に頼んだのだ。 (ロミオとジュリエット 第二幕 第二場)

素晴らしい言葉ですね。 でも、これは常人の感覚ではありません。(笑) 恋に燃えると こんなことを考えてしまうのです。
夏になると、ほんとに朝早くから蝉の鳴き声が聞こえてきます。 あたりまえですが木に蝉がいなければ聞こえないわけですが(笑) 昔はいっぱい いたでしょうから、まさに「明け立てば」蝉が鳴き出して、 遠くに近くに、ずーっと聞こえていたのでしょう。 その蝉の鳴く声を聞けば、よみ人しらずさんの心も泣き続け、 悲しみが止まらないのです。
夜は蛍です。 昔の人が蛍に見たものは、美しさとともに、燃える思いでした。 心の燃えているのが見える、そう感じたのです。 そして蛍を見ると、心が燃えてますます思いはつのるのです。
ほんとに燃えるような恋であれば、何を見ても何を聞いても、 思いは恋につながるものでしょう。 でもよみ人知らずさんは、夏の季節感いっぱいで歌を詠みました。 実はロミオとジュリエットも、夏のお話です。でもロミオの言葉にも ジュリエットの言葉にも、それほど季節感はありません。 それはやはり風土の違い、民族の違いだろうと思います。 よみ人しらずさんは、恋にのめりこんでいるにもかかわらず、 言葉に季節が出てきます。 「蝉の折り這へ 鳴き暮らし 夜は蛍の 燃えこそわたれ」 まさに夏満開の 恋の歌ですね。
次は、式子内親王(しょくしないしんのう)の歌です。

色色の露をまがきのとこ夏におきて過ぎぬる村雨の空
〔色々の 露を籬(まがき)の 常夏に 置きて過ぎぬる 村雨の空〕

籬は、竹や柴などで粗く編んだ垣です。 常夏は、なでしこの古名。村雨は、にわかにザーッとひとしきり降る雨です。
様々な色の 露を、籬に咲いている なでしこに 置いて過ぎ去った 村雨の空。
美しいですね!!
夕立とか、夏はいきなりざーっと来る雨がありますね。 あとは、またからっとして。その雨が通り過ぎたあと、 垣に咲いているナデシコの淡紅色の上に、水滴が露のように載っていたのです。 そしてそれぞれの露には、周りの様々な色が映っていたのでした。 周りにある花の色、葉っぱの色、枝や垣の色、そして空の色が映って、 そのナデシコの光景はほんとに美しかったでしょうね。 そこに、雨の上がった爽やかな空が広がっていたのでした。
素晴らしい光景ですね。 ざーっと降った雨の後ですから、残った水滴は、きっと普通の露よりも 大粒のものだったのではないでしょうか。 だからいつもの露よりも、それぞれに映っている色がよく見えたのです。 村雨はナデシコの上に、普通の露ではなく、「色々の露」を置いていってくれたのでした。 「色々の 露を籬の 常夏に」、そして広がる雨上がりの空。 この夏、この光景を見てみたい!! そう思わせる ほんとに美しい歌ですね。
さあ、暑い夏。しっかり水分補給をして、いっぱい楽しみたいですね。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087