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今月は

11月です。 カレンダーも薄っぺらくなってきて、こうなると少し寂しい感じです。
今月は秋も終盤ですね。 今年の紅葉はどうでしょうか。 ここは美しい秋をやはり堪能しておきたいですね。 そして8日が立冬になりますが、 今月はここ金沢では冬に向けてストーブを出し始める時節です。 仕舞っていたストーブを出して点けてみると、 なかなか点火しなかったりとかもありますが、 燃え出すと暖かくてほっとして、いよいよ冬が来るんだなーという気分になります。 そして冬の備えをしたら、あとはゆっくり晩秋を楽しみたいです。
金花糖も今月からは、いよいよ温かいお餅メニューです。 季節メニューに、ぜんざいと、焼き餅トリオを始めます。 お餅のメニューといえば主役はもちろん餅です。 金花糖のお餅は、職人さんが手でぺったんぺったんついたお餅です。 手つきの餅は、伸びに力があってとっても美味しいです。 だんだんと冷え込んでくると、なんと言ってもお餅は体が暖まって元気が出ます。 今月はぜひ金花糖で、ぜんざい、焼き餅トリオのお餅メニューをご賞味くださいね。

では、秋の終りを詠んだ橘義通(たちばなの よしみち)の歌です。 前書きがあります。

宇治にて、網代(あじろ)を詠みました。

あじろぎにもみぢこきまぜよるひをはにしきをあらふ心地こそすれ
〔網代木(あじろぎ)に 紅葉こき混ぜ 寄る氷魚(ひを)は 錦を洗ふ 心地こそすれ〕

網代に 紅葉をかき混ぜて 寄ってくる氷魚(ひお)の光景は 錦を洗っている 感じが するなー。
網代は、川の魚を捕る仕掛けです。 網代木とも言いますが、川の上流に向かってV字形に開いたように細かく杭を打ち、 竹などで編んだものを使って、魚を集めるようにしたものです。 氷魚は、鮎の稚魚で小さな半透明の魚ですが、 昔はこの氷魚を網代で捕る光景は宇治の名物でした。 その様子は、御所の帝が日頃おられる所の、襖(ふすま)の絵にも描かれているほどでした。
秋の終りや冬の初め頃になると網代には、 氷魚が飛び跳ねて、紅葉もいっぱいで混ざったようになって流れ込んでくるわけです。

網代1 網代2

紅葉にまみれた小さな魚がピチピチ跳ねて、その波に紅葉が揺れる。 これは美しい眺めですね。
網代のある宇治は、 長谷寺に参詣する時などに通るところでもあり、 源氏物語の舞台にもなったように貴族の別荘もあったりと、 京の人には馴染み深いところでした。 そして宇治川に紅葉がいっぱい流れてくるのは、 もう紅葉は落ちてしまった頃、その紅葉が川に流れている光景です。
歌を詠んだ義通(よしみち)さんも、赤や黄色に染まった網代を眺めながら、 秋も終ったなーという思いも浮かんだのではないでしょうか。 「網代木(あじろぎ)に 紅葉こき混ぜ 寄る氷魚(ひを)は 錦を洗ふ 心地こそすれ」、 秋の紅葉と、初冬の氷魚から生み出された、華麗な景色です。 秋から冬へ、めぐる季節を感じさせる美しい歌ですね。
さあ、紅葉に深まる秋です。冷え込んで来たら、裏起毛でも着て元気に行きたいです。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087