今月は
2002年 5月は
5月の異名は「薫風」。月の異名はすごく多いのですが、
薫風は声にした時のなにか独特の響きと共に、この頃の感じがほんとに
よく表われていますね。
さて今月のメニューですが、抹茶ムースです。しっとり
スポンジケーキに抹茶のムースが重なった、前回も大好評だった
メニューです。ぜひご賞味ください。
「薫」、訓で読めば「かおる」。五月の香る歌といえば、
こんな素敵な歌があります。
五月(さつき)待つ 花橘(はなたちばな)の 香をかげば 昔の人の 袖の香ぞする
< 五月を待つように橘が咲いて、香りをかげば、昔のあの人の袖の 香りがする >
その頃は衣服に香を焚きしめました。袖には特に念入りに、ということも
あったようです。しかしここで「袖の香ぞする」となったのは、袖が、
つまり腕が近づいている時の香りがイメージにあったからだと思います。
作者は、昔のあの人の抱擁を思い出しているのではないでしょうか。
こんな歌を詠んだのは誰だろうと思うのですが、よみ人知らず!
ちょっと恥ずかしくて、名前を出せなかったのかもしれませんね。
この歌を本歌としてその後、橘の香りと昔の人を
テーマとした数多の歌が生まれます。
その中1つ、式子内親王(しょくしないしんのう)の歌は
かへり来ぬ 昔を今と 思ひ寝の 夢の枕に にほふ橘
< 帰って来ない昔を今にもどせたらと、思いながら寝て 見た夢の、枕もとに匂っている橘よ >
この橘はもちろん昔の恋人の香り。もどれない昔に、夢で帰ったのですね。