今月は
2020年 3月は
さて今月は、20日が春分です。
春分まで来るとほんとに春ですね。
とは言えここ金沢ではまだストーブは必要で、今月もストーブは欠かせないのですが、
でももう冬の寒さはありません。
その頃には、桜の話題も出てきて、つぼみも少しづつ膨らんで、
やはり春の気分いっぱいになります。
世の中いろんなことがありますが、
春の気も頂いて、落ち着いた気持ちでまた乗り越えて行きたいです。
金花糖は、今月はおひなさまを飾りまして春も満開でお迎えいたします。
メニューも恒例の特別メニューで、ひなまつりパフェをいたします。
ひなまつりパフェは、短冊に切ったスポンジケーキに、
金花糖の餡や苺が添えられた、ほんとに春らしいパフェです。
スポンジケーキは自家製で、そのしっかりした味わいを生かしたパフェになっています。
毎年大好評のメニューです。
今月は金花糖で、是非ひなまつりパフェをご賞味くださいね。
では、春に詠まれた在原業平の歌です。前書きがあります。
三月一日に。 忍んでその人にいろいろ言い交して、その後、 雨がしとしと降っていました時に詠んで送りました。
おきもせず ねもせでよるを あかしては 春の物とて ながめくらしつ
〔起きもせず 寝もせで夜を 明かしては 春の物とて ながめ暮らしつ〕
起きもしない 寝もしないで夜を 明かして、そして 春には付き物の 長雨をただじっと眺めて日が暮れるまで過ごした。
意味がも一つはっきりしなくても、何かすごい歌ですね。
とにかく夜も、昼も、何をしているのか分からなくなっています、という意の恋文です。
これは、二人だけにしか分からない歌です。
「起きもせず 寝もせで夜を」明かしたのも、二人の時なのか、
業平さんが帰ってからのことなのかも分かりません。
でも、二人には通じます。
そして思いの熱も伝わったと思います。
業平さんは歌の名人です。
ただ、「心余りて、言葉足らず」(古今和歌集)、心を入れすぎて言葉が足りないという評もありました。
しかし恋文のようなものは、
立場のある人ほど用心が必要で ―― それは今どきも同じですが(笑)―― 二人にしか分からないように書くのも大事なことだったのです。
源氏物語には、ある若者が恋文から不倫が発覚して、
晩年の光源氏がその恋文を見て嘆く場面があります。
人の、文をこそ思ひやりなく書きけれ。落ち散ることもこそと思ひしかば、 昔 ・・・ 言そぎつつこそ書き紛らはししか。(源氏物語 / 紫式部)
《ひとかどの人が、手紙を何の察しもなく書いてしまったのだ。 むかし私は、落として人手に渡ることも、と思ったから、・・・ 言葉を省きながら書き紛らわしたものだが。》
業平さんも同じように、他の人にはよく分からないようにこの歌を詠んだのかもしれません。
熱に浮かされたような歌ですが、「ながめ暮らしつ」の「ながめ」は、長雨と眺めの掛け詞です。
また「暮らし」は、暗しに通じた言葉で、上の句の「明かし」の反対語になっています。
いろいろ考えて詠んでますね。
やはり、心の燃えるものを、二人にだけ分かるような歌にしたかったのでしょう。
「起きもせず 寝もせで夜を 明かしては 春の物とて ながめ暮らしつ」、
しかしながら、二人がその後どうなったのかは分かっていません。
業平を主に描いた伊勢物語によれば、
その女性は 「形よりは、心なむ勝りたりける」人だったとか・・・
さあ、春三月です。
冬にこわばった体調もほぐれて、身も心も軽やかに!ですね。