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今月は

2010年 10月は

一気に涼しくなりましたね。
あんなに暑かったのに、いっぺんに半袖では寒いようになって。 でも気持が付いていかなくて、いつもなら今はこれくらいの涼しさでも おかしくないのですが、秋気分になるのに時間がかかってしまいました。 おかしなものですね。
今月はいい時節です。残暑も過ぎて、涼しいけど寒くはないですし、 そして食欲の秋です。(笑) 今年は秋刀魚が高いとかいう話でしたが、 魚売り場ではあまり変わらないみたいでよかったです。 涼しくて、夜は虫の音も聞こえて、食べ物も美味しい。 言うことなしですね。(笑)
今月の金花糖は、 特別メニューとして 「お洒落なさつまいもアイス」 をいたします。 さつまいもに、五郎島の金時(きんとき)を使ったアイスです。 ホームのページに写真を載せました。 アイスの横に金花糖の餡、上にちょこんと生クリームとミントです。 そして一番上に載っているのは、芋かりんとうですが、 アイスにしたさつまいもの残った皮を使いました。 加賀野菜、金時いもの味わいを生かしたメニューです。すごく美味しいですよ。 ぜひ金花糖で、「お洒落なさつまいもアイス」をご賞味くださいね。
では、秋の到来を詠んだよみ人しらずの歌です。

このまよりもりくる月の影見れば心づくしの秋はきにけり
〔木の間より 漏りくる月の 影見れば 心尽くしの 秋は来にけり〕

この「影」は、光の意味です。「心尽くし」は、物思いに心を使い果たす意です。
木々の間から漏れてくる月の光を見て、心尽くしの秋が来たと感じた。
昔から春と秋は、どちらの方がよいかとかよく比べられました。 でもそれだけ春も秋も大好き、ということなんでしょうね。 そして秋は、物思いの秋、心尽くしの秋でした。 葉が落ち、草花が枯れてゆく。 秋の夜長に物思いは、ついつい深みにドボンとはまってしまうのです。
秋が来たという感じ方ももちろん様々です。 風から、空の雲から、空気の爽やかさから、 とにかく色々あって(笑) でもよみ人知らずさんが感じたのは、月の光からでした。 春から夏と木はどんどん繁って、 月の光も、木々のあるところでは葉に遮られるばかりだったのが、 猛暑も過ぎて、漏れてくる光が多くなってきた。 そういえば、月の光も冴えている。心尽くしの秋が来た。
でも月の光から秋を感じ、そして物思いに浸る、やっぱり素敵ですねー。 そういえばこの歌はよみ人しらずとはいいながら、「小野小町集」にも入っています。 というのは、いま伝わっている「小野小町集」は、 小町さん以外の人の歌がいろいろに混ざっているようなものなのです。 もちろん誰かが混ぜてしまったのですが、 でも適当に混ざっているのではありません。 小町さんのイメージに合うような、 人の歌を混ぜてあるのです。(笑) すると、この歌はぴったりでした。 「漏りくる月の 影見れば 心尽くしの 秋は来にけり」、 確かにらしいです。(笑) ともかく、美しい秋が身にしみる素敵な歌ですね。
次は、秋に詠まれた藤原義孝の歌です。前書きがあります。
人から、「お父様の病気はいかがですか」 とお見舞いがあったので 伝えました。

夕まぐれ木繁き庭をながめつつ木葉と共に落つる涙か
〔夕間暮れ 木繁き庭を 眺めつつ 木の葉と共に 落つる涙か〕

夕暮のうす暗い頃に、木が生い茂る庭をぼんやりと見ては、 木の葉と共に落ちてくる涙が・・・
かなり悪かったのですね。 輝いていた日が沈み、あの夏は盛んに繁っていた葉が落ちる、 思いはどうしても重なってしまいます。 義孝さんは歌の天才でした。 いろんな思いが重なったような歌を、さっと詠みだせる人です。 でもこの歌は、「落つる涙か」という一つの思いだけが どーんと伝わってくるのです。
父や母を病で失うことの悲しみは、どんな時であっても同じように深いものでしょう。 でもこの歌では、 義孝さんのどうしようもないという思いに、秋が重なっているように思います。 「木繁き庭を 眺めつつ 木の葉と共に 落つる涙か」、 秋は、やはり心尽くしの秋になるのかもしれませんね。
さあ、今年も3/4が過ぎたことになります。早いですね。 心尽くしの秋ですが、食欲の秋、行楽の秋、芸術の秋、 読書の秋、・・・ やっぱり秋はいっぱい楽しみたいですね。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087