今月は
2016年 3月は
寒かったり暖かかったり、先月は寒暖の差が大きかったですね。
それでもここまで来ればいよいよ春です。
ここ金沢では、毎年3月にも必ずと言っていいほど一、二度雪が降りますが、
今年は基本的に暖かいのでどうでしょうか。
でも今年の冬も思ったんですが、
天気の長期予報というのはなかなか難しいですね。
天気の予報といっても、言わば空気の流れを予報しているみたいなものですから、
それが長期となれば世界中が関係するので、世界中の空気の流れを予報するわけで、
それはたしかに掴みどころのない話です。(笑)
桜も早いと思っているんですが、まあ来てのお楽しみということで。(笑)
金花糖も、今月は冬眠から本格的に目覚めまして、
おひなさまを飾って春の気分でお迎えいたします。
メニューも今月は毎年恒例の特別メニューとして、ひなまつりパフェをいたします。
ひなまつりパフェは、短冊に切ったスポンジケーキに、金花糖の餡や苺が添えられて、
ほんとに春らしいパフェです。
スポンジケーキは自家製で、そのしっかりした味を生かしたパフェになっています。
毎年大変好評のメニューです。
この三月は金花糖で、是非ひなまつりパフェをご賞味くださいね。
では、春の月を詠んだ歌です。よみ人知らずです。
春くればこがくれおほきゆふづくよおぼつかなしも花かげにして
〔春来れば 木隠れ多き 夕月夜(ゆふづくよ) おぼつかなしも 花影にして〕
春が来たので 木に隠れてしまうことの多い 夕方の月、くっきりと見えないというのも 花影に居て。
だんだん春になってきた、という歌ですね。
夕月夜というのは、新月から半月くらいまでの月のことです。
夕方に見えてくるのですが、夜遅くなるまでに沈んでしまいます。
ということは午前中から昇っているのですが、空が明るいので目立たず、
夕方から輝いてくるわけです。
そして春になると、木のある庭などで見ていれば、
木の葉が少しずつ出てきて影になってきます。
夕月夜は夜半までに沈むわけですから、夕方すでに山に傾いた方向に、
つまり低い空に見えているので木の影になりやすいのです。
でも、夕方の赤い日の光では、葉の緑色は暗い色に見えてしまいます。
だから葉っぱしかなければ、まだ月の輝きは目立っていて見やすいわけですが、
しかしそこに白や赤っぽい花が咲いてくると、花の色は赤い日の光で、より輝くように見えてしまいます。
月が目立たなくなるのです。
よみ人知らずさん、夕月夜が前ほどはくっきり見えないなーと思ったら、花の影だったというわけですね。
「春来れば 木隠れ多き 夕月夜 おぼつかなしも 花影にして」、
花のせいで夕方の月の見え方がちょっと違う、こんな春の趣もあるんですね。
昔の人のものを見る目の素晴らしさ、そんなことを感じる歌ですね。
次は、平安時代の第六十九代、後朱雀天皇の歌です。
前書きがあります。
春雨の降りしく頃は青柳のいと乱れつつ人ぞ恋ひしき
〔春雨の 降りしく頃は 青柳の 糸乱れつつ 人ぞ恋しき〕
春雨の しきりに降る頃は 青柳の 糸が乱れるように、心はひどく乱れつつ 私のあの人が恋しくて。
恋の歌ですね。
昔は帝は、何人もの女性がいるのが普通でした。
女性は御后一人だけという方もおられますが稀でした。
それは帝の御意向という場合もありますが、
周りが権力や名誉を競ってそうなってしまうというのも多かったようです。
そのお相手の女性には位がありました。
いちばん上が御后で、これは一人だけのはずなんですが、
これも権力の力によって二人になってしまうこともありました。
前書きにある女御(にょうご)というのは、后の次の位です。
これは何人でもよいのですが、いい家の女性でなくてはなれない位でした。
ということは、位と愛されるかどうかは必ずしも結びついてないわけです。
後朱雀天皇は、梅壺の女御さんをすごく愛しておられました。
そして後朱雀天皇の御性格は、その頃の本によれば、
「御心、いとめでたくあるべかしく」 (御気質は、本当に素晴らしいそのもので) と書かれていて、
これは温和で周りに気遣いもあってということではないかと思います。
ということは、
いくら好きでも梅壺さんとばかりお付き合いしていては他の方に申し訳ない、
という風に思われる方だったのでしょう。
そして、新たに麗景殿の女御さんという方が入って来られました。
この歌は、そんな時に梅壺さんに送られたものです。
春雨の降る日でした。
こんな日の青柳の糸のように、私の心は乱れつつ、あなたが恋しくてなりません。
「春雨の 降りしく頃は 青柳の 糸乱れつつ 人ぞ恋しき」、
あなたとは書かずに、「人ぞ恋しき」 と、人とぼかした所が後朱雀さんの御性格ではないでしょうか。
きっと、精一杯の歌だったのです。
そう思うと、本当に心のこもった恋の歌ですね。
さあ、いよいよほんとに春らしくなってきます。
花が咲き、恋も咲き・・・ いつまでも、そんな気持でいたいですね。