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今月は

2013年 6月は

今年の春は寒かったですね。
暖かいときは暖かかったですが、どっと寒くなるので、 今年はストーブを片付けるのも遅かったです。先月の連休が終わってもずっと出てました。 急な寒暖で体調もも一つの春でしたが、 続いて今月は梅雨です。(笑) でも、まぁ、ここはアメニモマケズ!! 元気に外へ出て 過ごしていきたいと思います。
今月の金花糖は、梅雨のすっきりメニューで、わらび餅をいたします。 金花糖のわらび餅は、黒豆きなこと、自家製の黒蜜がかかっています。 そして特製冷茶付き。とっても美味しいわらび餅ですよ。 じめじめ気分にはすっきりと、ぜひ金花糖で、わらび餅をご賞味くださいね。
では、梅雨を詠んだ歌です。 梅雨は、昔は旧暦の五月に降るので、五月雨(さみだれ)です。 少し長い前書きがあります。

三条の右大臣が少将でありました時、忍びに通う所がありました。 殿上人が5、6人ほど、五月雨が少し止み、月も朧になっている頃に、 酒をいただこうと押し入ったのですが、 少将はちょっと疎遠になっていた時でいなかったのです。 それで立ったままでいて、主を出せなどと戯れると、主の女が詠みました。

さみだれにながめくらせる月なればさやにも見えずくもがくれつつ
〔五月雨に ながめ暮らせる 月なれば さやにも見えず 雲隠れつつ〕

五月雨に 長雨で物思いにぼんやりと眺め暮らしている 月ですから はっきりは見えません、 雲に隠れたままで。
友達が集まってきて、主は何処だとか、わいわい言われたわけですね。 困ったものですね(笑) でもこの家の女性は慌てず騒がず、 ぐだぐだと言い訳をしないで、さっと歌を詠んでお返事をしたわけです。 五月雨ですから、あの人は月のように雲隠れのままですよ・・・ 季節を詠んで、 それにちゃんとお返事の意味を載せる、 そんな歌がさっと出せるというのがすごいですね。
でも、この次はどうなったんでしょうか。 残念ながら分からず、想像するしかありません。 その頃の常識からいけば、こんな歌を詠まれたら、 押し入った人たちも歌で返さなければなりません。 でもその歌が残ってないということは、 大した歌は詠めなかったのではないでしょうか。(笑) ま、 そのまま引き下がったんでしょう ね。(笑) 「五月雨に ながめ暮らせる 月なれば さやにも見えず 雲隠れつつ」、 押し入ってきた男たちに、季節感いっぱいの歌で切り返した見事な歌ですね。
次は、九条良経(くじょうよしつね)の歌です。

あめはるるのきのしづくにかげ見えてあやめにすがるなつのよの月
〔雨晴るる 軒の雫に影見えて 菖蒲にすがる 夏の夜の月〕

雨が晴れた 軒の雫に光が見えて 菖蒲にすがっている 夏の夜の月。
影は、光の意です。あやめ(菖蒲)は今のショウブのことです。 そして昔は5月5日に、菖蒲を軒に挿して邪気を払う風習があって、 旧暦ではその頃が梅雨でした。
夜、雨が上がった。軒からはまだ雫が落ちています。 家の中から見ていると、雫に光が見えた。 夜の暗さの中、光った雫が落ちているのです。 幻想的!! 美しい光景ですね。
何だろうと思って見てみると、 雨が上がったので、雫の落ち方がだんだんゆっくりになってきて、 雫が、軒の菖蒲から垂れ落ちそうになりながら落ちないでいて、 まるで菖蒲にすがっているようになっているのです。 その雫に、月が見えたのでした。
良経さんは家の中にいて、月はたぶん直接には見えてないのでしょう。 夜の暗さの中、月の光が、雫で屈折して見えた光景でした。 「軒の雫に影見えて 菖蒲にすがる 夏の夜の月」、梅雨と言えば うっとうしい季節で、としか思わないわけですが、 こんな幻想的な趣もあるんですね。 良経さんの、まさに鋭い感性が表われた歌ですね。
たしかに梅雨も、心一つで楽しめるのでしょう。 体調だけは早め早めで気をつけて、心は元気に行きたいです。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087