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今月は

2006年 10月は

すっかり秋らしくなりました。 少し前あんなに暑かったのにと、分かってはいても思ってしまいます。 今月は、10月6日が中秋の名月ですね。お天気はどうでしょうか。 いい月が見られるといいですね。
金花糖も秋です。今月から、焼餅トリオ、ぜんざいが始まります。 金花糖のお餅は手搗きですが、開店以来ずっと同じ職人さんに搗いていただいてまして、 お餅そのものがとても美味しいものです。 いつもゆっくりした雰囲気の金花糖ですが、秋は一段と落ち着いた感じになってきています。 そんな中でまたゆっくりと、お餅メニューを楽しんでいただければと思います
では中秋の月を詠んだ、赤染衛門(あかぞめえもん)の歌です。 赤染衛門は、中宮(今の皇后)に紫式部などと共にお仕えしていた女房でした。

今宵こそ 世にある人は ゆかしけれ いづこもかくや 月を見るらん

《今宵こそ 世の人すべてを 見てみたい どこもこの様に 月を見てるよ》

ほんとに美しい月だったんですね、全て心が奪われるみたいな。 もう世の中にある人でこの月に目の行かない人はいないはずだ、 だからその様子も見てみたい、とまで思ってしまったのです。 興奮状態というか、やはり月に心が奪われたということだったのですね。 そこまで素晴らしい月。さあ、今月はどうでしょうか。 でも赤染衛門の頃、1000年前は、空気もきれいだったんでしょうね。
次は同じ頃のやはり女房だった馬内侍(うまのないし)の歌です。

枝しげみ 下に紅葉(もみ)づる 萩の花 秋知りそめし 人や恋しき

《枝繁り 下葉は紅葉に 萩の花 秋に出会った 人や恋しき》

秋らしいですね。萩は低木ですが、その下の方の葉が紅葉になってきて、 そしてそれを見ると、カレとは秋のこんな頃に知り初めたのだったと、また恋しいと思う。
美しい歌なのですが、この歌にはもう一つの意味があるのです。 秋は、「飽き」の掛けことば。 「秋知りそめし」は、「飽き知り初めし」でもあるのです。 そして下の方から色が変わり始めた萩は、心が変わり始めた例えになるもの。
そう、馬内侍さんはカレの心が変わり始めた、飽き始めたことを感じているのです。 美しい歌に詠み込まれた恋の悩み。 それもまた美しいと言っては、人の気も知らないでと言われますかねー。(^-^;

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087