今月は
2010年 5月は
五月、いい時節が来ましたね。
空は気持がいいし、歩いていると、
いろんな鳥の声もなぜか気持ちよく聞こえてきます。
ホトトギスなど今ごろに来る鳥がそういう鳴き声なのでしょうか、
何か鳥の声が空に広く響いているように感じます。
まあ、気分でそう聞こえるだけなのかもしれませんが。(笑) 加えて今月は
連休があって、ほんとにいいことづくめの月ですね。(笑)
でも、こういうちょうどいい時節は、メニューとなると少し難しさがあるのです。
温かいものと冷たいものの中間だから、ぬるいもの!! というわけにも
いきません。(笑)
以前は季節メニューが温かいぜんざいから、
ある日イキナリわらび餅になっていたのですが、
最近は合いの季節に合わせたものを挟むようになりました。
それは温かいぜんざいに、お餅を使わないで、
夏の氷に使うつるつるの白玉を入れる、白玉ぜんざいです。
冬でもなく、夏でもなく、ちょうどいい時節のメニューです。
月初めはお餅のぜんざいですが、今月の中ごろから白玉ぜんざいにいたします。
ぜひ、ご賞味くださいね。
では、春を詠んだよみ人しらずの歌です。
春雨ににほへる色もあかなくにかさへなつかし山吹の花
〔春雨に 匂へる色も 飽かなくに 香さへ懐かし 山吹の花〕
《春雨に 映える色にも 飽きないのに 香さえ引かれる 山吹の花》
「匂へる」は色が映える意で、「懐かし」は心がひかれ離れがたいという意味です。
山吹色はほんとにきれいな色ですね。
単なる黄色でもオレンジでもなくて、
独特の鮮やかな色です。
そして春雨が降ると、花の色だけではなくて、
木々の茶色も、
葉の緑も全て濃い色になります。
加えてやはり晴れの日みたいに明るくありません。
見えているもの全てが、何か濃い目の落ちついた色合いの中で、
山吹色はまさに輝くように、
何か目にぱーっと飛び込んでくるように見えてしまいます。
ほんとに山吹は、それだけで素晴らしいです。
ところが山吹は、加えて香りの魅力があるのです。
これは鬼に金棒ですね。(笑) 「春雨に 匂へる色も 飽かなくに」・・・ あらためて
春雨の日に、山吹の色と香りを確かめたくなるような素敵な歌ですね。
次は、崇徳院の歌です。
花はねに鳥はふるすにかへるなり春のとまりをしる人ぞなき
〔花は根に 鳥は古巣に 帰るなり 春の止まりを 知る人ぞ無き〕
「止まり」は、行き着くところという意です。
春の終わり。花は根に帰り、鳥は古巣に帰る。
そして、春が帰るところは誰にも分からない。
浮かぶ状景がほんとに美しいですね。
花や鳥の帰るところは分かっても、止めることはできません。
去っていく春を追えるものなら追いかけたいが、
春の帰るところも分からない。
美しい春の終わりに、崇徳院さんは、
我々が出来ることはその春が終わるのを惜しみ、
そして自然の流れを受けて行くことのみなのだ、と感じたのではないでしょうか。
「花は根に 鳥は古巣に 帰るなり」・・・ 美しい春を見送る、美しい歌ですね。
春も後半です。
そして今月が終ると心地よい春も、いよいよ梅雨そして夏へと向かいます。
気持ちのいい時節を、いっぱい楽しみたいですね。