今月は
2015年 5月は
五月、いい時節になりました。
4月はまだなんか寒さがあるんですが、
今月はもう寒い感じもなく、もちろん暑くもなくそして空気も爽やか。
こんな季節こそ長く続いてほしいと思うんですが、
まあそうは行かないんでしょうね。(笑) 日本の風土はやはり四季がしっかりとあって、
そしてこの薫風5月の気持ちよさもあるということでしょうか。
実はここ金沢は、だいたい空気が湿っぽいというか、からっとしてないです。
それでも5月になると、空気も清々しいです。
素晴らしいというか、ほんとにいい時期ですね。
金花糖も今月は、端午の節句ということで兜を飾りまして、五月の趣でお迎えいたします。
そして暑くもなく寒くもなくのこの時節に、 メニューは紅茶あんみつはいかがでしょうか。
紅茶あんみつは、濃いめアールグレーの、紅茶寒天が主役のあんみつです。
ベースに紅茶寒天がたっぷり入って、 その上に丹波大納言の餡と、自家製アイスが載せられます。
色どりに生クリームに苺とキウイが添えられ、固定ファンも多い好評のメニューです。
特製白蜜が付いて、お好みの甘さで紅茶寒天の味わいを楽しんでいただけます。
今月は金花糖で、ぜひ紅茶あんみつをご賞味くださいね。
では、春を詠んだ伊勢の歌です。伊勢は千百年前の女房です。帝の寵愛も受け、御子も生まれています。
前書きがあります。
忘れていた人を夢に見まして
はるのよのゆめにあふとしみえつるはおもひたえにし人をまつかな
〔春の夜の 夢に逢ふとし 見えつるは 思ひ絶えにし 人を待つかな〕
春の夜の 夢に逢っていると 見えたのは、思いが絶えたはずの 人を待っているのだ・・・
思いを絶った人に、夢で逢っている。
これは伊勢さん、間違いなく思い切れてないですね(笑)
でも、この歌の夢の解釈は、無意識の深層心理です。
今はそんな考え方は普通にしますが、
それは20世紀の初め、フロイトの心理学が出てからのことなのです。
昔は、意識的に懸命に思い続けるからこそ夢に表れる、そう思われていました。
そしてそういう強い思いは、昔は相手の人の夢の中にまで伝わっていくと信じられてました。
ですから伊勢さんの夢に男が出てきたのなら、
その男が伊勢さんのことを懸命に思っているから、という解釈になってもいいわけです。
でもそうは思わなかった。
夢の源は、自分の心の底の無意識にあると思ったのです。
これはすごいですね。
やはり詩人ならではの感性かもしれません。
フロイトは、こんなことを書いています。
言語学者や精神医学者からよりも、 むしろ詩人から学ぶところが多いといっても驚くにはあたらないのです。(精神分析学入門 / ジークムント・フロイト)
そして、シェークスピアの作品にある無意識の心理が出る場面があげられています。
詩人の感性がずっと昔から無意識を心の深層としてとらえていたことは、
フロイトも認めるところでした。
実はシェークスピアより六百年前、紫式部の源氏物語にも無意識が表れる場面が書かれています。
その源氏物語のなかで、最も敬愛されている歌人が貫之と、そして伊勢でした。
「春の夜の 夢に逢ふとし 見えつるは 思ひ絶えにし 人を待つかな」、
突然心の底に埋め込まれていたものが現れた。
男と女の 「春の夜の夢」、ついつい夢の中身を考えてしまうのですが、
ここは想像だけにしておきましょう。(笑)
次は、春の終りを詠んだ河内(こうち)の歌です。河内は九百年前の女房です。
けふくれぬはなのちりしもかくぞありし二たび春は物をおもふよ
〔今日暮れぬ 花の散りしも かくぞありし 二(ふた)たび春は 物を思ふよ〕
今日は暮れてしまった 花の散ったときも そうであった。二度、春は どうにもできず思いわずらうよ。
春の終りといっても、今はいつが終りなのかはっきりしません。
でも昔は、立夏の前日で春は終りとしました。
立夏というのは、春分と夏至のちょうど真ん中の日なのです。
今年の立夏は今月の6日です。
でも旧暦の暦では、立夏は4月1日あたりの日になるのです。
それで旧暦では普通は3月末日を春の終りとしていました。
河内さんは、春最後の日、春を惜しむ歌を詠んだのでした。
日は暮れた。春の最後の日もおしまいです。
どれだけ留めようと思っても止めようもなく、美しい春も去ってゆく。
ほんとうに時節の流れはどうしようもないです。
今年の春も終わった、そう思うしかありません。
思えば、桜のときもそうでした。
どれだけ留めようと思っても止めようもなく、桜は散っていった。
今年の桜も終わった、やはりそう思うしかなかった。
春を惜しむ気持から、同じ思いを持った記憶が二重に重なったのです。
「花の散りしも かくぞありし 二たび春は 物を思ふよ」、
春の終りに、桜の散る思いが重なる。
美しい春惜別の歌ですね。
さあ、春も終盤です。
気持のいい時節をいっぱい楽しみたいですね。