今月は
2016年 6月は
先月は寒暖が激しかったですが、やはり今はいい時節ですね。
そして本当に日が長くなりました。
朝目が覚めるともうすっかり明るいですし、
夕方は7時になっても明るさがあって、ほんとに初夏という感じです。
そして今月は、ついに梅雨入りです。
雨は続く、じめじめする、食べ物は傷みやすい、体調は悪いと、
まあいい事があんまりないんですが(笑) しかし梅雨は日本の自然をつくる大事な季節ですから、
ここは体調をしっかり保って、乗り切っていきたいです。
今月の金花糖は、梅雨にすっきりメニューということで、わらび餅をいたします。
黒豆きなこと黒蜜がかかって、とっても美味しいわらび餅です。
黒蜜は自家製です。
お客様からも、この黒蜜は美味しいとお声をいただく特製の黒蜜です。
そして特製冷茶付き。
じめじめ気分にはぜひすっきりと、金花糖でわらび餅をご賞味くださいね 。
では、梅雨を詠んだ和泉式部の歌です。
梅雨は、旧暦では五月でしたから、古語では五月雨(さみだれ)となります。
さみだれは物おもふ事ぞまさりける詠めのうちに詠めくれつつ
〔五月雨は もの思ふ事ぞ 増さりける 眺めのうちに 眺め暮れつつ〕
五月雨は 思いに耽(ふけ)る事が 多くなるなー 長雨のあいだ、眺め 眺めて暮れて行きながら。
昔は雨が降ると、外出は大変でした。
大体が何でもあまり雨降り向きにできてないのです。
例えば貴族の衣服では、色が雨に濡れると落ちてしまうようなものもありました。
またいちばん使われていた乗り物は牛車でしたが、別に防水ではありません。
小雨くらいならよかったでしょうが、雨が強くなってしまうと油紙とかで水を防がなくてはなりませんでした。
また道も土の所が多いですから、雨が降ればぬかるみます。
そうなると、雨降りは出来れば外へ出たくないわけです。
かといって当たり前ですが電話とかテレビがあるわけでなし、
ついつい雨を見て、なんとなく過ごしてしまうというわけです。
長雨をずっと眺めていれば、たしかに物思いも重症になってきそうな気がします。
「五月雨は もの思ふ事ぞ 増さりける 眺めのうちに 眺め暮れつつ」、
雨に閉じ込められたかのように、雨を眺め眺めて日が暮れる。
梅雨の、まさに湿った重い気分が表れた歌ですね。
次は、藤原良経(よしつね)の歌です。
うちしめりあやめぞかをる時鳥鳴くやさ月の雨のゆふぐれ
〔うち湿り 菖蒲(あやめ)ぞ薫る ホトトギス 鳴くや五月(さつき)の 雨の夕暮〕
すっかり湿り ショウブが薫る ホトトギス 鳴くよ皐月の 雨の夕暮。
この「あやめ」は今のショウブのことです。
それにしても、梅雨をここまで趣のあるものとして、美しく詠んだ歌は少ないのではないでしょうか。
やはり梅雨といえばどうしても気分が沈むような歌になってしまうものですが、良経さんはさすがです。
良経さんは、まさに才能溢れるという方でした。
歌だけでなく、書、漢詩、どれもが天才でした。
そして政治家としても太政(だじょう)大臣まで登りつめた方です。
太政大臣というのは、左大臣右大臣よりも上、まさに最高位です。
しかしなんと38歳で急死。天才の運命なのでしょうか。
梅雨で何処もかしこも湿ったような感じになると、我々は何かよくないことばかりに思うのですが、
薫りについては、その成分が染み付いて留まりやすく、それで香気が強く感じたり、長く薫りが続いたりするそうです。
この梅雨の薫りのことは、清少納言も枕草子に書いています。
だからいい薫りであればですが(笑) 梅雨はそういう趣のある季節なのです。
そこでこの歌は 「うち湿り 菖蒲ぞ薫る」、湿気があって ショウブがよく薫る、となっているわけです。
そして五月雨の夕方、雲に蔽われた暗い夕方の空にホトトギスが鳴いている、という趣です。
「うち湿り 菖蒲(あやめ)ぞ薫る ホトトギス 鳴くや五月の 雨の夕暮」、
梅雨を、薫りが素晴らしい、趣深い季節として詠んだ素敵な歌ですね。
さあ、梅雨入りです。
薫りといえば、梅雨用に悪い匂いだけを消して、いい匂いは消さないという消臭剤があるといいと思うんですが、
まあ難しいんでしょうね。(笑)