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今月は

2003年 11月は

11月は、秋もおわり冬が少しずつやってきますね。二十四節気では、 8日が立冬、そして23日が小雪です。 金花糖も自然に、春夏は明るい雰囲気なのですが、秋冬はお客様も 少なめで、静かな雰囲気になるのです。
今月の特別メニューは、この季節の恒例、新蕎麦だんごです。 蕎麦は収穫の時期が、春のもあれば夏のもあって、冬以外はどの季節 にも収穫されるもののようです。でもその中でいちばん美味しい のが、秋に収穫されたもので、これを新蕎麦と言っています。 あっさりとした、季節の美味しさ、新蕎麦だんごを ぜひお楽しみくださいね。
さて、晩秋は紅葉の季節。 紅葉の美しい歌は数え切れないくらいですが、中でも美しい 凡河内躬恒(おうしこうちのみつね)の歌。

風吹けば 落つるもみぢ葉 水きよみ 散らぬかげさへ 底に見えつつ

< 風吹いて落ちる紅葉葉。水が美しく、散っていない 紅葉の影も底に見えながら >

風に吹かれて池に浮び漂う紅葉、その澄んだ水底には、 枝の紅葉が水に映り揺れながら見えるのです。 紅葉の色に、水の、透明な揺らぐ輝くイメージ が重なっています。ほんとに美しいですね。
では次ぎは、馬内侍(うまのないし)の歌です。 馬内侍は、三十六歌仙に選ばれるほどの歌の上手。そして 一条天皇の后、定子に仕えました。定子のそばには、才能の ある女性が集められていたのです。その中の一人は、清少納言でした。

寝覚して たれか聞くらむ この頃の 木の葉にかかる 夜半の時雨を

馬内侍さんは、秋は物思いで寝覚めることがしばしばだったのです。 その時聞こえていたのは虫の音と微かな落葉の音だったのに、 気がつくとこの頃は、木の葉にかかる時雨の冷え冷えとした音が。 夜半、私と同じように誰か、この音を聞いているんだろうか。
冬が来たのだと感じたその時、夜半の闇の中で思いはめぐり、 同じ音に耳を傾ける「たれか」を、思い描いていたのです。 待つ恋、そんな趣も感じさせる歌ですね。
気がつくと秋も終わり、冬が少しずつ見えてきます。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087