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今月は

2019年 6月は

今月は梅雨入りです。 ここ金沢では月の中ごろが多いですが、今年はどうでしょうか。
まあ梅雨と言ってもそんなに毎日雨が降るという印象はないんですが、 日数が経ってくると柱でも壁でも、 しっとりと言うと聞こえはいいですが(笑) 湿ったままになって、 いかにも健康に悪そうな感じです。 とにかく体がだるくなってきたら要注意だとか。 運動不足など健康管理に注意して、この梅雨を乗り切りたいですね。
今月の金花糖は、梅雨のすっきりメニューで、わらび餅をいたします。 わらび粉は、れんこんのでんぷんの物で、 きなこは黒豆きなこ、そして自家製の黒蜜がかかっています。 とっても美味しいわらび餅です。 自家製の黒蜜は、お客様からとても美味しいと評判をいただいています。 そして特製冷茶付きですから、じめじめ気分にぴったりです。 今月は金花糖で、ぜひわらび餅をご賞味くださいね。
では、梅雨、五月雨(さみだれ)の夜を詠んだ式子内親王(しょくし ないしんのう)の歌です。

春秋の色のほかなるあはれかなほたるほのめく五月雨のよひ
〔春秋の 色の外(ほか)なる 哀れかな 蛍ほのめく 五月雨の宵〕

春秋の 色とは違う 心が深く動かされる哀れです・・・ 蛍がほのかに光っている 五月雨の宵。
蛍はほんとに見なくなりましたね。 でもこういう趣は、たしかに春や秋とはまた別の何か深いものを感じます。
哀れ(あはれ)は、もともとは悲哀だけではなく、 もっと広い意味で美しさ、喜び、悲しみ、とにかく心動かされるということが「あはれ」でした。 そして源氏物語などによって、心に浸みるような悲しみや憂いなど、 特に深く心の動かされるものが哀れ(あはれ)と言われるようになりました。

人の情の様々に感ずる中に、・・・ 悲しきこと憂きこと、恋しきことなど、 すべて心に思ふに叶はぬ筋には、感ずること、こよなく深きわざなるが故に、 しか深き方を、取り分きても、あはれと言へるなり。(玉の小櫛 / 本居宣長)

「あはれ」には「悲しきこと憂きこと」だけでなく、「恋しきこと」も加わっています。 やはり恋は、世間の決め事があり、そして動かし難い運命というものがあって、 ほんとに 「心に思ふに叶はぬ」 ものだからこそなのでしょう。 色々の「恋しきこと」には、物の哀れ(もののあはれ)があるのです。
そしてこの歌が詠まれたときの情景は、想像するに、 しとしと降っている暗闇に、 蛍が光の細い線を消えかかる様に描いているのです。 浮かぶ思いは「悲しきこと」でしょうか、「憂きこと」か、 そしてまた「恋しきこと」なのでしょうか。 「春秋の 色の外(ほか)なる 哀れかな 蛍ほのめく 五月雨の宵」、 梅雨の暗い夜、庭に浮かぶ微かな光を、じっと見つめている女性が浮かびます。 何かを秘めて、その思いの深さを感じる歌ですね。
さあ、いよいよ梅雨に入ります。ここは気持ちで落ちないように、元気を意識していきたいです。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087