今月は
2008年 10月は
ほんとに秋ですねー。服も長袖になって、過ごしやすい時節になりました。
夜長はゆっくりと読書もよし映画もよし、秋は落ち着いて何かを楽しむような気分になりますね。
今月の金花糖は、月初めは合いメニュー、
そしてもっと涼しくなったころから、いよいよぜんざい、焼き餅トリオの冬メニューを始めます。
ぜんざいと焼き餅トリオはお餅が使われるメニューですが、
金花糖では開店以来ずっと同じ職人さんに、手搗きで搗いてもらっています。
伸びに力があって美味しいお餅です。
いよいよ温かいメニューが美味しい時節。
ぜひ金花糖で、お餅のメニューをご賞味くださいね。
では、秋の歌です。
藤原良経(よしつね)が詠みました。
おしなべておもひしことのかずかずに猶色まさる秋の夕ぐれ
〔おしなべて 思ひしことの 数々に なほ色まさる 秋の夕暮〕
《これまでに 思いしことの 数々に なお色深き 秋の夕暮》
これまで生きてきた中で、数々の思いがあった。でも秋の夕暮れには、
今までよりももっと深い、もっと切ない思いが湧いてくる。
秋は毎年くるものです。でも良経さんは、秋の夕暮れになるとそう思ってしまうのです。
夕暮れの気分から、どうしてもそう感じられてしまう、そういうことなんでしょうね。
そんな夕暮れの思いは、800年前の女房だった宮内卿(くないきょう)も歌にしています。
おもふことさしてそれとはなきものを秋のゆふべを心にぞとふ
〔思ふこと さしてそれとは 無きものを 秋の夕べを 心にぞ問ふ〕
心に悩みとか思うことはさして無いのに、
秋の夕べは何か感じてしまう。
これはどういうことなんだろう、秋の夕べに何があるんだろうと、
宮内卿さんは心に問い返したのでした。
面白いですね!!
たしかに秋の夕暮れは、何か寂しさのようなものがあります。
華やかな野の花にも、全て枯れてゆく冬が待っています。
一日一日の歩みを惜しむように、夕暮れの美しさが感じられるのでしょうか。
恋する人ならば、物思いも輪をかけて切ないものになるでしょうね。
そういえば季節の感じ方とかは、
気候風土はもちろん民族などによっても違うものですよね。
日本の感性で書かれた季節の美しさ、その代表的なものといえば、
やはり清少納言、枕草子でしょうか。
秋は夕暮、夕日の射して、山の端いと近うなりたるに、 烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ二つ三つなど飛び急ぐさへ哀れなり
やはり「秋は夕暮れ」、それは「哀れなり」です。
良経さんも宮内卿さんも、そういう思いっだんでしょうね。
今の時代は食べ物など、季節感がなくなっていると言われます。
でも、時節はやはり秋。
今月は、日本の秋の夕暮れを、じっくり味わってみてはいかがでしょうか。