今月は
2011年 6月は
梅雨入り、すごい早いですね。
そのぶん明けるのも早いんでしょうか、そんなうまくは行かないんでしょうね。
今年は長いかもしれません。
雨が降っても傘をさせばいいだけなんですが、
なんとなく濡れるし(笑) 靴もお気に入りが履けなかったりとか、
ついつい外出の気力がそがれてしまいます。
でも長そうな梅雨ですし、
ここは積極的に動いて乗り切りたいものですね。
今月の金花糖は、すっきり夏メニューの始まりです。
まず6月はわらび餅をいたします。
黒豆きなこと、自家製の黒蜜がかかっています。
そして特製冷茶付き。
美味しいですよー。
じめじめ梅雨にはすっきりと、ぜひ金花糖でわらび餅をご賞味くださいね。
では、五月雨(さみだれ)と、郭公(ほととぎす)を詠んだ紀貫之
の歌です。貫之は千百年前の歌人です。
五月雨のそらもとどろに郭公なにをうしとかよただなくらむ
〔さみだれの 空も轟に ほととぎす 何を憂しとか 夜ただ鳴くらむ〕
梅雨の 空も轟くように降る中に ほとぎすは 何を
やりきれないとか 夜、ただひたすら鳴いているのだろう。
梅雨の夜、どーっと音を響かせて雨が降っている。
そんな中にほととぎすが、ひたすらに鳴いている。
何かすごい情景ですね。
「とどろに」は、とどろにほととぎすが鳴いている、とも取れるのですが、
万葉以来、「滝もとどろに」、「波もとどろに」、「磯もとどろに」など水の音に
使われる例が多いので、雨の音に取りました。
海を空に置き換えたように言い表わすのも、貫之らしいところですし。
それにしても、この歌の情景はほんとにただならぬ感じなのですが、
歌を詠んだ貫之さんはこの情景を、今の我々と違った趣で聴いたと思います。
それは、鳥の鳴き声の感じ方などが、土地や時代によって異なるものだからです。
我々は、例えばうぐいすなら、ホーホケキョ(ほー法華経)と聞いてしまいます。
ほととぎすなら、トッキョキョカキョク(特許許可局)とか、
テッペンカケタカ(天辺掛けたか)とか聞こえます。
あたりまえですが鳥さんはそんなこと思ってなくても、
人間は自分の分かりやすいように聴いてしまいます。
そして貫之さんの平安の頃は、
ほととぎすの鋭い鳴き声が、何か悲しい叫びのように感じられました。
叫びならギャーだろうとかいうのは不粋な話です。(笑) 小鳥の声で叫んでいるわけです。
その頃の人はほととぎすの声を聴くと、悲しみや物思いが浮かびました。
誰かを求めるような、人恋しさを誘われる声でもありました。
そんな声が、夜、どーっと空に響くように降る雨の中で、ひたすら聴こえてくるのです。
貫之さんの浮かんだものは何だったんでしょうか。具体的には何も書かれていません。
貫之さんは、古今和歌集の選者の一人であり、その序文まで書いた人です。
しかし実生活では、官位は上がらず、不遇の人でした。
人間嫌いだったとも・・・ ほととぎすの声は、まさに止めどない嘆きとして
聴こえたのではないでしょうか。
「さみだれの 空も轟に ほととぎす」、その音が、憂いの込もった響きで
浮かんでくるような歌ですね。
次は、さみだれを題にして詠まれた和泉式部の歌です
夜のほどにかりそめ人やきたりけんよどのみこものけさみだれたる
〔夜の程に 仮初め人や 来たりけん 淀の水菰(みこも)の 今朝乱れたる〕
夜の間に 気まぐれに人が 来たのだろうか 淀の水菰の 今朝乱れている・・・
淀は、水のよどんでいる所です。
水菰は、イネ科の草のマコモ(真菰)が、水の中から生えているものを言います。
真菰は、昔は葉で筵や畳を編んだりする草でした。
朝起きてみたら、家の周りある水菰が乱れていた。
誰か来たけど、帰ったみたい・・・ そんな時間に
和泉さんのところに来るのは、
もちろん男です。(笑) 和泉さんは、もてました。
いろいろ男がいるからこそ、誰が来たんだろう?となるわけです。(笑)
そのころは、訪れても入れずに帰るときには、しるしを残すことがありました。
夏なら、草が長いので草を結ぶとかしておくわけです。
このときは水菰を、「仮初め」とありますから、刀か何かで、
刈りそめていったのかもしれません。
でも、せっかく来たのになぜ帰ってしまったのでしょうか。
「淀の」は夜殿、つまり寝室です。
寝室の「水菰」は、寝床に使う畳や筵につながる言葉です。
それが「今朝乱れたる」・・・ そうです!! たぶん別の男と寝てたのです。(笑)
いやー、なかなかです f(^_^;) そう言えば、題の「さみだれ」はどうなったのでしょうか。
それは、今朝乱れたる・・・ け「さみだれ」たる、ちゃんと詠み込んであった
わけです!!
「淀の水菰の 今朝乱れたる」、さすが和泉式部さん、
いろいろ乱れた趣の面白い歌ですね。
さあ、雨雨雨の日々です。
和泉さんの元気は参考にならないかもしれませんが(笑) なんとか元気にいきたいです。