今月は
2009年 6月は
今月は梅雨入りです。じめじめの時節ですね。
しかも新型インフルエンザとか、困った話題ばかりで梅雨がますます湿っぽくなりそうです。
でもここは気の持ちようで、ぜひ元気を出していきたいものです。
金花糖も、今月から夏メニューの始まりということで、爽やかに行きたいと思っています。
そして、冷たい鯛焼き、ひやっ鯛(冷鯛)も始まっています。
ひやっ鯛の味わいですが、
薄く焼いた皮が上品に香ばしくて、生クリームと餡にからまってとっても美味しいです。
ぜひぜひ、ご賞味くださいね。
では梅雨、五月雨(さみだれ)を詠んだ俊成女(としなりのむすめ)の歌です。
苔ふかき軒の雫か五月雨の雲間の風は猶こぼれつつ
〔苔深き 軒の雫(しづく)か 五月雨の 雲間の風は 猶(なほ)こぼれつつ〕
雨が止んだのだろうか、途切れた雲の間から風が来る。
でも雫の音がする。苔深い軒に残った雨水が、こぼれていた。
梅雨が途切れて、しばらく雫だけが残っている、その時の趣ですね。
梅雨の湿った空気に、さわやかな風が吹き込み、
そして雨の音が止んだ。
長く聞き続けていた雨音が消えて、
とても静かなのです。
ポツッ、ポツッと雫の音だけが大きく聞こえてくる。
そんな時、ありますね。
俊成女は、800年前の歌人です。
今は「苔深き軒」も無いかもしれませんが、
この梅雨が途切れた時の趣はやはり色々なところで感じられます。
「苔深き 軒の雫か 五月雨の・・・」 梅雨の一場面を、見事に詠んだ歌ですね。
次は、やはり雨を詠んだ在原業平(ありわらのなりひら)の歌です。
かずかずにおもひおもはずとひがたみ身をしる雨はふりぞまされる
〔かずかずに 思ひ思はず 問ひ難(がた)み 身を知る雨は 降りぞ増される〕
《あれこれと 思いのほどは 問い難く 我が身知る雨 ますます強く》
この歌は、このままではちょっと意味が分かりません。(笑) 実はこの歌の前には
物語があるのです。
業平の家に、まだ年の若い仕えている娘がいました。
その娘に関係した男がいたのですが、その男から娘に手紙が来て、
「あなたの所に行きたいのですが、雨が降りそうなので迷っています。」 とあったのです。
雨だから来れないというのは、やはり移り気の言い訳です。
そこで業平は、その娘に代わって 「かずかずに 思ひ思はず・・・」 と歌を詠み、
娘に手紙に書かせたのでした。
歌の意は
あれこれとあなたの思いを聞いてみたいのですが、
来ていただかないのでは聞くことができません。
雨が降ってきたのは、雨が私の思いを知っているから。
雨は私の涙です。ますます降ってきています・・・
男は、びしょびしょに濡れて飛んで来たとか。(笑)
人の魅力というのは、今でも顔や形だけではありませんよね。
優しさとかセンスとか色々です。
昔は、歌のセンスがいい、それも大きな魅力でした。
男の人が飛んできたのは、あの娘が泣いている!! ということもありましたが、
歌の素晴らしさに、こんな素敵な感性の人を放っておけない!! という思いが
湧いたからだったと思うのです。
「身を知る雨は 降りぞ増される」、業平さんの狙いが的中したわけです。(笑)
梅雨は、なんとなく元気も出ないもの。
でも、誰かをびしょびしょに濡れて飛んで来させられたら、
たしかに元気はいっぱいになりますね。(笑)