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今月は

2025年 10月は

秋いっぱいの10月ですね。 今月は6日が中秋の名月です。 中秋の名月は、旧暦8月15日の月のことですから普通は9月になるんですが、今年は10月になりました。
実は今年の旧暦は、6月の後に、 閏(うるう)6月という月が入って1年が13か月になり、そのために中秋の名月が10月になってしまったのです。 1年が13ヶ月!今ではあり得ない話ですが旧暦では時折あることでした。
旧暦の特徴は月の満ち欠けをそのまま1か月にするということですが、 なぜそこまで月を暦に入れるのにこだわったのでしょうか。 月への信仰が強かったからとも言われますが、そうでもないような気がします。
月を暦に入れれば、海の高潮は必ず15日前後と月初め月末になります。 今日が高潮かどうかを知ることは、漁民や沿岸地方に住む人々には非常に大事です。 ですから暦に月を取り入れることは、実用的にも意味があるのです。 思うに、昔の人は旧暦をより実用的な暦として作ったのではないか思うのですがどうでしょうか。
ということで今月は中秋の名月。やっぱり、まず晴れてほしいですね。 期待したいです。
さてさて、こんな秋いっぱいの時節。 ここは、金花糖の甘味でゆったり気分になられては如何でしょうか。 金花糖の餡は、小豆が丹波大納言。ほんとに美味しいですよ。 この時節を、ぜひ金花糖で楽しんでくださいね。
では、秋の月を詠まれた花山院の御歌です。花山院は、第六五代天皇であった方です。

あきのよの月にこころのあくがれてくもゐにものを思ふころかな
《秋の夜の 月に心の 憧(あくが)れて 雲居に物を 思ふころかな》

秋の夜の 月に心が 惹(ひ)かれ抜け出ていって 雲の高い空にあって物の 思いにふけるような頃だなー。
「憧(あくが)れて」は、今の「憧(あこが)れて」になる言葉ですが、もともとは心などが何かに惹かれて元の居場所を離れてさまようという意でした。この歌でもそういう意味で使われています。
たしかに月がほんとにきれいな夜というのは、空気が澄み切っていて月との距離感が分からないような感覚になります。 そしてじっと見ているとほんとに心が月に吸い込まれそうな、そんな感じがすることがあります。 「月に心の 憧(あくが)れて」、ということですね。
また秋は、今は色んな楽しみいっぱいの季節ですが、 昔は秋は美しい素晴らしい季節ではあるんですが、一方で物思いにはまり込み、ついつい何か悩むことが尽きないような季節でもあったのです。 物思いといっても多くはやはり恋の思いだったようですが、 美しい月を見ながら恋の悩みに、あーでもないこーでもないと心がはまり込んで行くと、 気が付けば、心は月に惹かれるように自分を離れ高い空に昇ったまま物思いにふけっている。 まあ、思いもそこまで来ると何をやり出すかは人によるとは思いますが(笑)秋はそんな季節だったわけです。
「秋の夜の 月に心の 憧(あくが)れて 雲居に物を 思ふころかな」、 それにしても、心が月に惹かれて空に昇って行って恋の物思いにふけっている、なんとロマンチックな歌でしょうか。 やはり我々には決して詠めない、天皇ならではの感性で詠まれた歌と思います。 中秋の名月にも、そんな思いが浮かんでほしい・・ 夢見るような素敵な歌ですね。
さあ、暑くもなく寒くもなく雑草も伸びてこないと、いい事づくめの10月です。 秋の夜長も楽しみですね。張り切って行きましょう。

甘味処 金花糖/石川県金沢市長町 3-8-12/tel 076-221-2087